新春の風物詩、東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝、来年1月2、3日)が迫ってきた。日刊スポーツでは連載「箱根のミカタ」として、今回の駅伝の注目ポイントを3回にわたって紹介します。第1回は4区と山登りの5区の距離変更。レースへの影響、戦略の変化はあるのか。陸連の元副会長で、順大を9度の総合優勝に導いた沢木啓祐氏(73)が「変わる箱根」を予想します。【取材・構成=田口潤】

 箱根が変わる。17年大会から山登りの5区が23・2キロから20・8キロと2・4キロ短縮し、4区が18・5キロから20・9キロに延長される。山登りの5区が20キロ台に短縮されたのは、05年以来12年ぶり。沢木氏は「今回の距離変更で、箱根は面白くなる」と断言した。

 5区が長くなった06年から16年まで、レースの注目度は山登りに集中した。06、07年の今井(順大)09~12年の柏原(東洋大)13年の服部(日体大)15年の神野(青学大)ら、山の神が衝撃的な走りを見せ、チームを優勝に導いた。06年から16年まで区間賞の11人のチームのうち、10校が往路優勝し、7校が総合優勝している。

 沢木氏 差がつきやすく、事故も起こりやすい山の重要性は変わらないが、今大会からは山の神がいなくても勝てる。1人のヒーローで勝負が決まるケースは減る。

 沢木氏は73年から順大の指揮を執り、4連覇を含む9度の総合優勝を実現している。5区は20キロ台と変更された今回とほぼ同距離だったが、5区の区間賞は、わずか1人。一方で、4区の区間賞は7人もいる。当時の4区は延長された今回とほぼ同距離だった。

 沢木氏 4区の重要性が増す。唯一の20キロ以下の18・5キロと短縮された06年からは、つなぎ区間といわれてきた。1年生や、スタミナに不安のある選手が走ることが多かったが、距離が延長した今大会からは違う。自分が指揮していた時と同様、山に良い位置で入るためにも、各大学はエースもしくは準エースを走らせる。エース区間の2区に次ぐ重要区間になる。

 近年は山の神がレースの大勢を決め、復路もそのまま逃げ切るパターンが多かった。5区の短縮により、沢木氏は「復路の9、10区での逆転劇も出てくるかもしれない」と続けた。

 3連覇と大学駅伝3冠のかかる青学大の走りが最大の注目の今大会。今回の距離変更は青学大にとって有利なのか不利なのか。青学大の原晋監督は「今年は山の神がいない」と明言するものの、エース級といわれる1万メートル28分台は登録選手16人のうち9人をそろえ、他大学を圧倒している。

 沢木氏 山だけで決まらないとなれば、層の厚い青学大は有利。優勝の可能性は80%以上。V1、V2時より、優勝確率は高い。

 距離変更は、山の神不在も戦力豊富な青学大に追い風になりそうだ。