陸上のダイヤモンドリーグ開幕戦のドーハ2017が5日、カタールの首都ドーハで開催される。女子200メートルのエレイン・トンプソン(24=ジャマイカ)、女子3000メートル障害のルス・ジェベト(20=バーレーン)ら金メダリスト8人が出場し、リオ五輪の興奮を中東でも再現する。世界記録保持者が出場する2種目のほか、記録的にも期待が持てるオープニングゲームとなりそうだ。

 女子800メートルに豪華メンバーが集結した。金メダルのカスター・セメンヤ(26=南アフリカ)らリオ五輪メダリスト3人に加え、1500メートル世界記録保持者のゲンゼベ・ディババ(26=エチオピア)も参戦してきた。ペースメーカーもつく大会なので、これだけのメンバーが後半まで競り合えば1分55秒を切るハイレベルのタイムも期待できる。

 優勝候補筆頭はやはりセメンヤだ。昨年はリオ五輪、ダイヤモンドリーグ5大会を含めシーズンを通じて一度も負けなかった。短距離選手のようながっちりした体格で、切れのあるスパートというよりも力強い走りで他を圧倒してきた。

 ディババが1500メートル、5000メートルで得意とする展開は中盤からのロングスパート。800メートルなら、残り400メートル以上の地点で飛び出す方が勝機は大きくなるが、姉のティルネシュ・ディババは切れのあるラストスパートを武器に5000メートル、1万メートルで3個の五輪金メダルを獲得した選手だった。妹のディババも、セメンヤとの対決でラストスパートの能力を高める狙いなのかもしれない。

 女子3000メートル障害もリオ五輪メダリスト3人がそろった。金メダリストのジェベトは五輪後に8分52秒78の世界新をマークし、昨シーズンで第一人者のポジションを固めた。

 しかし銀メダルのハイビン・ジェプケモイ(25=ケニア)も打倒チェベトに意欲を見せてきた。9分00秒01の世界歴代3位を持ち、昨年のダイヤモンドリーグ上海大会ではジェベトを破っている。銅メダルのエマ・コバーン(26=米国)は9分07秒63の北米記録保持者。他の選手が予想しない地点でスパートするなど勝負勘が優れている。

 チェベトが独走に持ち込んで自身の世界記録更新に挑戦する可能性もあるが、9分前後のペースならジェプケモイ、コバーンらと激しい戦いになるだろう。

 勝負として面白いのが女子200メートル。リオ五輪金メダルのトンプソンと、銀メダルのダフネ・シュキッパーズ(24=オランダ)が対決する。男子やり投げも金メダルのトーマス・レーラー(25=ドイツ)と銀メダルのジュリアス・イェゴ(28=ケニア)の、90メートルスローワー同士の戦いが熱くなりそうだ。

 記録的には女子100メートル障害のケンドラ・ハリソン(24=米国)が、自身の持つ12秒20の世界記録更新に挑む。男子三段跳びで18メートル21の世界歴代2位を持つクリスチャン・テイラー(26=米国)も、世界記録18メートル29の更新を狙ってくるだろう。

 日本勢では新井涼平(25=スズキ浜松AC)が男子やり投げに出場する。一昨年の北京世界陸上、昨年のリオ五輪と連続して予選を通過する健闘を見せたが、決勝で力を出し切れずに入賞を逃してきた。レーラー、イェゴらとのガチンコ勝負で、5月21日のゴールデングランプリ川崎、8月のロンドン世界陸上につなげられるヒントを持ち帰りたい。

 ◆ダイヤモンドリーグ IAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していたが、今年はファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会が実施され、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ・チャンピオンとなる。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4または6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルのほかダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国毎の出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。