【ロンドン=上田悠太】注目のマラソンが実施され、男子は「最強の公務員ランナー」川内優輝(30=埼玉県庁)が魂の走りで日本勢トップの9位に食い込んだ。日本代表として走る最後として臨み、8位入賞まで3秒差の2時間12分19秒の力走。男女とも日本勢が入賞を逃すのは95年イエーテボリ大会以来22年ぶりとなった。

 川内のフルコースだった。序盤で看板に激突し、左太ももに傷を負い、その後に段差で転倒。20キロ過ぎに先頭集団から脱落し、26・5キロ付近では給水に失敗。ただ、ここからが神髄。沿道から「17位だぞ」と声が飛んだ。過去2大会出場した11年と13年の世界選手権は18位だった。「そんな順位はもう嫌」と闘志が復活した。歯を食いしばり、必死の形相で前を追う。ゴール前は顔を左右に振って、猛ダッシュ。入賞圏の8位と3秒差の9位に食い込んだ。

 最後まで走り切ると、額を地面につけて倒れ込んだ。13秒後にゴールした中本に背中をたたかれ、ねぎらわれた。力を尽くした。車いすに乗って、ドーピング検査へ向かった。30分後、涙を流して現れた。「苦しかった。悔しさもあるが、ようやくやり切った」。日本代表として戦う最後の舞台。年末には自費で試走し、5月には沖縄で5000メートルを1日で10本走り、汗の成分を分析した。これまで大きく変えてこなかったスペシャルドリンクのレモンの割合を1・5倍にして万全を期した。「今後も、私はばんばんマラソンを走っていきます。日本代表は責任が重い。きつい」。やり切った表情で胸を張った。

 もし、入賞していれば…20年東京五輪の代表3人中2人を決める「グランドチャンピオン(GC)レース」の出場権を得ていた。今後、GCレースを目指すかと問われると「まだ分からないですね」と言った。東京五輪は33歳。以前から信条がある。「私が出ているようでは駄目でしょ?」。ここで第一線を退くのは、若手への奮起を促す痛烈なメッセージでもある。