ナンバーワンになっても出られない!? 男子100メートル準決勝で日本記録保持者の桐生祥秀(22=日本生命)は1組1着で決勝に進出したが、タイムは10秒16(向かい風0・3メートル)。予選は10秒15(追い風0・4メートル)だった。今日23日の決勝を4年ぶりに制しても、10秒12を切れなければ、ジャカルタ・アジア大会(8月)の100メートル代表から落選する可能性が浮上した。

 桐生は決勝には進んだ。しかし、あと予選で0秒03を刻み出したかったことも事実だった。予選5組1着は後半流して10秒15。準決勝は1組1着の10秒16。今日23日の決勝で優勝しても、アジア大会100メートル代表から外れる可能性が浮上した。それを指摘されると「なるほど…」と驚いた。優勝に集中するあまり知らなかったようで「しっかり行きたい。気持ちよく優勝したい」。心配を吹き飛ばす快走を誓った。

 10秒12。アジア大会の男子100メートル代表2枠に入る上で切るべき重要な数字だった。好調を維持する山県とケンブリッジは今季10秒12をマークしているが、桐生は今季最高が10秒15。もし日本選手権を制しても、10秒12より遅かった場合、問題は発生する。山県、ケンブリッジがともに3位以内なら、桐生は代表から漏れる。今季はアジア大会優勝を最大の目標にしていただけに笑えない。約4時間前に200メートル予選を戦ってから臨む決勝は、勝負だけでなく、記録も求められる舞台となった。気になるのは条件。天気予報は、くもり一時雨だ。

 前回大会は4位。春から10秒0台を連発するなど好調だったが、肝心なレースで結果を残せず、世界選手権は男子400メートルリレーだけの出場だった。レース後は、6位だった山県と涙で個人での代表復帰を誓い合った。「決勝ではギアを1段階上げないと」と引き締める。2年連続で個人の代表の座を逃すわけにはいかない。【上田悠太】

 ◆男子100メートルの選考基準 アジア大会出場枠は2。9秒89の突破者は内定。また昨年10月以降に10秒12をクリアした選手(山県、ケンブリッジ)で、日本選手権3位以内の最上位者が内定。10秒12を突破しないままで優勝した選手は、山県とケンブリッジが3位以内の場合、代表落ちする可能性がある。

○…日本選手権のポスターには桐生、山県、ケンブリッジ、多田の写真と「ナンバーワンしかいらない。」とのキャッチコピーが描かれている。サニブラウンの欠場が発表される前は、サニブラウンと桐生の写真と「王座堅守VS日本最速」の文字が書かれていた。