<陸上:日本グランプリシリーズ第4戦・静岡国際兼世界選手権代表選考会>◇3日◇静岡スタジアム(エコパ)

 男子400メートルはロンドン五輪1600メートルリレーの代表だった中野弘幸(24=愛知陸協)が45秒62で優勝。今季から小学校の教員となり、練習時間が少ない環境のなかで自己記録を0・19秒更新した。

 “最速の教員ランナー”が誕生した瞬間だった。終盤の強さは圧巻で、ロンドン五輪代表で日本選手権8連勝中の金丸祐三(25=大塚製薬)を置き去りにした。

 昨年までは愛知教育大の大学院生。先生を目指していたが「高校時代の無名選手が日本代表になれることを示したい」と競技も頑張った。リレーではあるがロンドン五輪に出場し、400メートルランナーの勲章でもある45秒台も記録した。

 競技活動が優先できる環境に進む選択もできただろう。だが「日本の将来を担う人材を育てる重要な仕事に就く」ことが長年の目標だった。

 現在の練習は土日に母校の大学で1日3時間ずつ練習をする。それ以外は校務の合間に15分、30分と時間を見つけて校庭で行う。「クラブ活動が週に2回あって、1回20分ですがそこも活用しています」。その環境でも記録を伸ばした。モスクワ世界陸上B標準に0・02秒届かなかったが、実業団選手と学生トップ選手たちを一蹴。世界陸上の個人種目代表も現実的な目標になった。

 「仕事優先で競技を続け、不可能を可能にしたい」。日本一足の速い熱血教師が誕生した。