陸上のダイヤモンドリーグ第11戦のセインバリー記念ゲームは26日、27日の2日間、昨年のロンドン五輪会場だったオリンピック・スタジアムで行われる。ダイヤモンドリーグで唯一の2日間開催で、実施種目数も26と群を抜いて多い。ウサイン・ボルト(26=ジャマイカ)や地元のモー・ファラー(30=英国)ら、ロンドン五輪で活躍した選手が多数出場する。また、男子走り高跳びで今季2メートル40以上を跳んでいるボーダン・ボンダレンコ(23=ウクライナ)とムタス・エッサ・バルシム(22=カタール)ら、急成長を見せている選手たちにも注目したい。

 ボルトは6月6日のローマ大会でジャスティン・ガトリン(31=米国)に敗れて以来の、ダイヤモンドリーグ100メートル登場だ。

 同21日のジャマイカ選手権は9秒94で優勝。向かい風1・2メートルの条件だったので、適度な追い風なら9秒8前後は出ていた。記録だけを見ると不満が残るが、立て直してきたと見ていい。

 今季世界1位(9秒75)のタイソン・ゲイ(30=米国)はドーピング違反で、2年前の世界陸上テグ大会優勝のヨハン・ブレイク(23=ジャマイカ)はケガが治らず、来月のモスクワ世界陸上に出場できない。消去法的にボルトの楽勝を予想する声が多いが、今大会で9秒7前後を出して短距離第一人者の力を示したい。

 ファラーはボルトと並びロンドン五輪のヒーローだった。地元五輪で5000メートルと1万メートルの2冠を達成。今月19日のダイヤモンドリーグ・モナコ大会では専門外の1500メートルに出場し、3分28秒81のヨーロッパ新記録を樹立した。持ち味のスピードにさらに研きをかけている。

 今大会では3000メートルに出場。ロンドン1万メートル銅メダルのタリク・ベケレ(26=エチオピア)がライバルだが、ファラーが最後の1周で圧倒的なスパートを見せそうだ。

 バルシムは5月末のダイヤモンドリーグ・ユージーン大会に2メートル40で優勝。192センチで細身の黒人選手。手脚が長く、走り高跳びをするには理想的なプロポーションを誇る。昨年、銅メダルのロンドン五輪後に2メートル39をクリアし、28年ぶりにアジアタイ記録をマークした。期待の選手が屋外では今世紀初の大台をクリアして見せた。

 一方のボンダレンコはロンドン五輪7位だった選手。今季はダイヤモンドリーグ初戦のドーハ大会に2メートル33の自己新で優勝すると、6月30日のバーミンガム大会で2メートル36と記録を伸ばした。その4日後のローザンヌ大会で2メートル41の世界歴代3位タイに成功。今季の急成長ぶりは誰も予想できなかった。

 バルシムと比べるとややガッチリしているが、195センチでこちらも走り高跳び体形。棒高跳びのセルゲイ・ブブカら世界的な跳躍選手を多数生んでいるウクライナから、新たなスタージャンパーが誕生した。

 バルシムとボンダレンコの“鳥人対決”は来月のモスクワ世界陸上でも注目度が高い。ロンドンはその前哨戦となる。◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する最高カテゴリーの競技会シリーズ。今季はドーハ大会を皮切りに9月のブリュッセル大会まで全14戦が開催される。各大会の種目別優勝賞金は1万ドル(2位6000ドル~8位1000ドル)。各大会のポイント合計で争われる年間優勝者には4万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝。緊張感あるレースが次々に行われる。また、オリンピックや世界陸上のように1国3人という出場人数の制限がない。ジャマイカ、アメリカ勢がそろう短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目などは、オリンピックや世界陸上よりも激しい戦いになる。