室伏、アウト!

 スポーツ仲裁裁判所(CAS)は22日、国際オリンピック委員会(IOC)アスリート委員の選挙活動に関し、陸上男子ハンマー投げで、04年アテネ五輪金メダルの室伏広治(38=ミズノ)と日本オリンピック委員会(JOC)の訴えを却下した。IOCは選挙違反があったとして室伏を候補から外したが、室伏とJOCは不服として決定無効を訴えていた。2日の猪瀬直樹都知事の失言に続く失態に、20年東京五輪招致へのイメージダウンは計り知れない。

 却下の理由は後日明らかにされるが、CASが発表した短い文章は手厳しかった。室伏自身には「名誉やスポーツマンシップが損なわれることはない」とした上で、「却下の最大の原因はJOCがルールや規範に従っていない」と、明確に選挙違反があったことを指摘した。

 JOCは、過去の反省を生かし、12年ロンドン五輪前に特別支援チームを立ち上げた。今回から選挙活動のルールが厳しくなり、不明確な部分もあった。しかし、過去の消極さを反省し、積極的な活動を展開。JOC国際専門部の野上部会長は「グレーの部分が黒と取られたようだ」と、その積極さが裏目に出たと分析した。

 五輪期間中に、JOCはIOCから何度か警告を受けていた。IOCは許可を得た文書以外の配布やポスターの掲示、寄贈品を禁じている。しかし、選挙活動が禁止されている選手村食堂で、室伏は携帯クリーナーを配布。また、室伏が薬物使用禁止を訴えるポスターを貼った。室伏とJOCは「クリーナーは大会前に友人に配っただけ」「ポスターは選挙とは無関係」と反論していた。

 昨年8月8日にアスリート委員の投票が締め切られ、室伏はトップの得票数だったと言われる。しかし、その投票は無効とされ、最終的に室伏はIOCから候補を取り下げられる形となった。その決定を不服とし、昨年9月に、室伏とJOCはCASに提訴した。

 もし室伏が当選していれば、IOC委員も兼務できる。陸上のブブカ氏ら約100人のIOC委員に対し、20年東京五輪招致のロビー活動も可能だった。JOCの福田強化本部長も「実績抜群。語学力もあり、室伏君ほど適任の人はいない」と絶賛する逸材が、その機会を失った。

 ◆国際オリンピック委員会(IOC)選手委員

 サマランチ会長体制下の81年に発足。現役、または直前の五輪に出場した選手から委員を選び、選手の立場からIOCのオリンピック運動をサポートする。選挙は五輪開催ごとに行われ、任期は8年で総勢19人。IOC委員も兼務する。選挙は、五輪代表選手が1人4票まで投票し、各競技1人までの上位4人が当選。過去の日本人委員はシンクロの小谷実可子のみ。室伏は08年に続く2回目の挑戦だった。