<陸上・高校総体近畿大会>◇15日◇奈良・鴻ノ池陸上競技場◇男子200メートルほか

 陸上男子100メートルで日本人初の9秒台を狙う桐生祥秀(よしひで、17=京都・洛南高3年)が、名スプリンターの仲間入りを果たした。追い風0・5メートルの200メートル決勝を20秒41で連覇して19年ぶりの高校新記録を樹立。山県亮太(21=慶大)と同じ自己記録で、今季の日本ランク3位、日本歴代でも10位で並んだ。10秒01で日本歴代2位の100メートルとともにスプリント2種目で歴代10傑入りは、伊東、朝原、末続、塚原、山県と桐生の6人となった。

 狙い通りの新記録だった。桐生は、この日3本目の200メートル決勝でぐんぐん加速した。雨にぬれたトラックも構わずにコーナーを曲がる。独走態勢でゴールまで駆け抜けて、電光掲示板を見た。20秒41のタイムを確認して、右拳を真横に伸ばして雄たけびを上げた。

 「狙っていた。雨に負けないで、絶対にタイムを出してやるんだ、という気持ちで走った。コーナリングがうまくいって、体もぶれずにいけた。20秒4台が出てよかった」

 94年に高橋和裕(奈良・添上)が記録した20秒57を大幅に更新して、19年ぶりの高校新記録。5月19日に自己記録20秒59を出して「0秒02(足りない)ですよ~」と悔しがったが、この日は文句なしのタイムだ。何よりも日本歴代10位タイが光る。100メートルとともにスプリント2種目で同時に歴代10傑入り。伊東、朝原、末続らビッグネームが並ぶ中に入った。この日、会場を訪れた日本陸連の伊東短距離部長は「もっと、もっと出ますよ。10秒01の選手なので、20秒2台まではすぐでしょう。僕らはもう懐メロです」と笑った。

 前日14日には4月29日織田記念国際(広島)での10秒01が、風向風速計の不備でジュニア世界記録として未公認となった。伊東部長は「あってはならないが(春先の)4月にこれほどの記録は出ない、と誤った固定観念があった」と説明。それでも桐生は「またその記録を塗り替えられるように頑張る」と気合十分だ。

 憧れのボルトは前日13日に19秒79の200メートル今季世界最高を出した。ユース世界最高の20秒13も保持している。「(ボルトは)僕の年齢のころにはもっと速く走っているので。コツコツと上げていきたい。今日はゴールの前で力でいった。リラックスして走りたい」。「ジェット桐生」はまだ底知れない。【益田一弘】