<第91回箱根駅伝>◇2日◇往路◇東京-箱根(5区間107・5キロ)

 冠雪した箱根の山が牙をむいた。優勝候補筆頭の駒大は山登りの5区での大ブレーキが響き、1位青学大と7分25秒差の4位に沈んだ。4区までトップを走りながら、5区の馬場翔大(3年)が、雪が積もる寒さから低体温症を発症。3度も転倒しながらタスキはつないだが、7年ぶりの総合優勝は厳しくなった。2連覇を狙う東洋大も6分49秒差の3位と、優勝常連校の苦戦が続いた。

 木々が白く染まる箱根路に悲鳴が起こった。874メートルの国道1号線最高地点を越え、下りに入った22キロ手前で、馬場の足が大きく震えた。糸が切れるように前のめりに両手をつき、膝を折った。前を走る青学大の神野を追ってきたが、限界だった。

 伴走車から指示を送り続けた大八木監督が異変を感じたのは、10・5キロ付近で神野に抜かれたときだった。まったく付いていけない。12・7キロ付近の宮ノ下交差点過ぎで、「危ないな」と嫌な予感が増した。「低体温みたいだった」。前日から雪が降った箱根の山は、小田原中継所とは温度差が激しかった。最初の数キロを飛ばした元来の汗っかきの馬場。山に入って急に冷え込み、その汗が急激に冷え、体をむしばんだ。

 1度目の転倒からは、区間3位と躍動した昨年の姿は見る影もない。東洋大にも抜かれて4位に。何とか芦ノ湖までたどり着いたが、ゴール直前でも3度も転倒。観客からは悲鳴と「頑張れ!」の声が起きた。ゴールに倒れ込み、仲間に支えられテントに直行。毛布に何枚もくるまれ、救急車で緊急搬送された。大八木監督は「最後は意識がなかったようだ。20年やってきて、初めてのこと」と戸惑いを隠せなかった。

 11月の全日本大学駅伝を完全優勝で4連覇し、ライバル校から頭1つ抜け出す精鋭をそろえていた。1区の中村が首位発進するも、レース運びは順調ではなかった。2区で看板選手のエース村山が攻めの走りができず、区間4位で2位に後退。学生長距離界NO・1と呼ばれる村山は「力は出した。でも納得のいく走りではなかった」とうつむいた。そして3、4区で巻き返し、トップで5区に入ったところでのアクシデント。毎年のように優勝候補に挙げられながら、雪山に行く手を阻まれて、今年も苦境に陥った。

 もくろんだ往路勝負は大誤算となったが、なんとかつないだタスキを無駄にはできない。7分25秒差の逆転が厳しいのは承知する。大八木監督は「2番くらいまでいければいい」と現実を見た。【阿部健吾】