村上幸史(29=スズキ)が、世界選手権のやり投げで銅メダルを獲得できた陰には、多くの人たちの支えがあった。

 その1人は、ハンマー投げの室伏広治だ。体力、体格差が表れやすい投てき界で、世界と張り合う室伏は、あこがれだった。何度か、室伏が拠点とする中京大へ出げいこに行った。

 村上

 まずやったことが、おのを持って丸太を切ることでした。「ちょっとこれ、やってみな」と言われて…。最初は、何を言いたいのか、全然分からなかったです。

 体で分かったことは「軸」の大切さ。同じ投てき種目ゆえ、体幹の使い方には共通点があると気付いた。

 やり投げの日本記録保持者・溝口和洋氏にも世話になった。日大3年の時、日本陸連合宿で1度だけ指導を受けた。もらったアドバイスは「みぞおちを出していけ」。

 村上

 その時も何が言いたいのか分からなかったです。何を言っているんだと。分からないと嫌なんで、ずっと考えていました。

 出した結論は、やりを投げる時の体の反らせ方を改善すべきということ。腹を出すのでなく、胸の下辺りをグッと前に出す動きにヒントを得た。

 最大の師は、今治明徳高に入学してから、15年間も指導を受けている浜元一馬コーチ(今治明徳高副校長)だ。世界選手権でもスタンドの師から指示を受けた。

 村上

 先生は、僕の感覚とやっていることが合っているかを確認してくれます。今でも先生には、緊張感がありますよ。けんか?

 1回もないですね。

 村上を勧誘した日大の小山裕三監督も、村上が浜元コーチの指導を受け続けられるように環境を整備した立役者の1人だ。銅メダルは、1人で取れたわけでない。日本陸上界の人脈の力も、根底にある。【佐々木一郎】