リオから東京へ-。8月5日のリオデジャネイロ五輪開幕まで、27日でちょうど100日前になる。4年後の東京五輪もある中、各競技で、中学、高校生を含めた10代の選手の活躍が目立つ。競泳では15歳の池江璃花子(ルネサンス亀戸、淑徳巣鴨高1年)が100メートルバタフライとリレーを含め計4種目の五輪代表権を獲得した。リオでの表彰台、そして東京での金メダルを目指す15歳に迫った。【取材・構成=田口潤】

「リオから東京へ」と色紙に書いたリオ五輪競泳日本代表・池江璃花子
「リオから東京へ」と色紙に書いたリオ五輪競泳日本代表・池江璃花子

 スーパースイマーも、素顔は普通の15歳。5日の日本選手権の女子100メートルバタフライを制して初の五輪出場を決めた池江は「うぇ~ん」と大泣きして喜びを素直に表現した。

 池江 (映像を見返すと)自分でもびっくりするほど泣いていた。ちょっと引きました。あれを見てもらい泣きしましたという人も結構いた。わたしとしては恥ずかしいし、見ないでと。でも、人を感動させられることができて良かったと、ポジティブに考えています。泣いている写真や動画を送ってくる人も多い。

 日本選手権後は翌日から代表合宿に突入。昨夏世界選手権はリレー種目だけだったが、今回は個人種目を含めて計4種目。日本代表の自覚も芽生えてきた。

 池江 代表選手と一緒に合宿をして、ようやく五輪代表になれたと、実感が湧いてきました。

 昨秋から50メートルと100メートルの自由形、100メートルバタフライで日本記録を樹立。これまで学童、中学、日本記録を通算40回以上更新する。身長を上回る184センチのリーチなど恵まれた体格と豊富な練習量。さらに幼稚園の頃から取り組むイメージトレーニングが生きている。五輪代表権を懸けた日本選手権でも実践した。

 池江 昔から母親に、レースをイメージして寝なさいと言われていました。招集所からスタートしてゴールタッチして、優勝インタビューまでをイメージします。

 日本選手権の2週間前から、夜、布団に入ると、毎日、頭の中でレースの緊張感を味わってきた。

 池江 ふと学校のことが浮かんだり、余計なことが頭によぎったら、初めからやり直します。何回も繰り返すこともある。どんなに眠くても、最後まで必ずイメージします。

 何事にも妥協しない姿勢も、底知れぬ結果につながっている。

 競泳代表には中学生1人と高校生4人と、東京五輪を目指す同世代がそろった。

 池江 同世代が活躍し、みんなが注目されて、わたしも負けないように頑張ろうと思えます。

 中でも親友で、200メートル個人メドレーで出場権を得た今井月(豊川高1年)の存在は心強い。

 池江 中学2年のジュニア代表合宿で同部屋。好みはまったく違うんだけど、それが逆に楽しい。かわいい、かわいくないと言い合うのも楽しい。

 好きな男性のタイプも違う。

 池江 今は(俳優の)坂口健太郎。映画「ヒロイン失格」を見て、超格好いいと。月は(共演していた)山崎賢人が好き。そこも合わない。

 過去の五輪は4年前のロンドン大会だけしか記憶にない。

 池江 銅メダルを取った女子400メートルメドレーリレー。夜中テレビを見ていた。それだけは記憶がある。当時は五輪に出られるとは思っていなかった。ただすごいなと思っていました。

 小学6年だったロンドン五輪のころから4年。自身の想像を超えたスピードで成長を続ける。4年後の東京五輪の目標は「金メダル」と公言する。その次の8年後の五輪も出場するプランを描く。8年後でもまだ23歳。

 池江 東京(五輪)の次は狙います。その次はもういいかなと。30歳までは(現役を)続けない。29歳もちょっとあやしいかな。さすがにこんなにきつい練習を大人になってからもやりたくないです。

 最初のリオ五輪まで、あと100日。

 池江 あと100日もあるという感じ。合宿も多いし、水泳に集中できます。泳ぎの改善、スピードアップもたくさんできる。何とかなるというか、まだ可能性がいろいろある。とにかく人に流されないで、自分の思うようなレースをイメージし、その通り泳ぎたいです。

 伸びしろを感じるからこそ、今は泳ぐことが楽しく、すべてを犠牲にして競技に打ち込める。

 池江 息抜きは特にないです。少し休みができたらゆっくりして寝たい。(五輪後は)ディズニー(ランド)、ユニバー(サル・スタジオ・ジャパン)秋田県に行きたいです。

 秋田県は昨年の全国中学大会で訪れた。

 池江 温泉があるから、冬に行きたいです。テレビにも秋田の温泉が出ていて、行きたいなと。ゆったりと落ち着きたいです。

 まずはリオ、そしてリオが終わればすぐに東京と、周囲は慌ただしくなる。15歳が落ち着けるのは、まだまだ先になりそうだ。

リオ五輪で活躍が期待される10代の選手たち
リオ五輪で活躍が期待される10代の選手たち

競泳

◆酒井夏海(14=スウィン南越谷)

 日本選手権の100メートル背泳ぎを制し、400メートルメドレーリレーの代表権を獲得した。競泳では20年ぶりの中学生代表。昨年から頭角を現すと、メドレーリレー不成立の危機を救った。「スポットライトを浴びたいわけじゃないけど、浴びられないよりはいい」と強心臓も武器になりそうだ。


◆今井月(15=豊川高)

 女子200メートル個人メドレーで初の五輪を勝ち取った。日本選手権では、昨年世界選手権銀の渡部を抑えて2位に入った。8歳の誕生日に母リサさんが亡くなり、父博美さんとの二人三脚。「いつも母に良い報告ができればと、それは頑張れる材料になっている」。親孝行をする決意は強い。


バドミントン

◆山口茜(18=再春館製薬所)

 福井県勝山市で育った「天才少女」が初の五輪に挑む。現在五輪ポイントレースは11位で、出場はほぼ確実。4月のシンガポール・オープンで世界ランク1位の選手を破るなど勢い十分だ。「優勝よりも観客を魅了したい」と、得意のトリッキーな技で世界を驚かせる。


体操

◆白井健三(19=日体大)

 初めて挑む五輪舞台を前にしても「どんな大会か分からないので、特に緊張することはないです」と笑顔で話す。ロンドン五輪翌年の世界選手権で床運動の王座に就くと、昨年は再び王座を奪回。得意の床運動は「金メダル最有力」と言われるが「まず出場を決めてから」と自然体で話した。


卓球

◆伊藤美誠(15=スターツ)

 今月の五輪アジア予選では世界王者の丁寧(中国)を破った。「リオでは団体でメダル獲得。東京ではシングルスで金メダル」と宣言する。15年ドイツオープンのシングルスで14歳152日の最年少優勝。世界ランクは9位、年間の躍進選手に贈られる「ブレークスルー・スター」を受賞した。


陸上

◆サニブラウン・ハキーム(17=城西大付城西高)

 昨夏の世界選手権北京大会に高校2年で出場。200メートルで準決勝に進出したが「ボルト選手と走れずに悔しい。来年に持ち越しということで」と宣言。リオ切符がかかる日本選手権(6月、名古屋)では藤光、高瀬、飯塚らとの激戦必至だ。5月3日の静岡国際で五輪イヤー初戦を迎える。


◆10代メダリスト 夏季五輪の個人種目での10代のメダリストは26人。日本最年少はバルセロナ五輪競泳女子平泳ぎ金メダルの岩崎恭子の14歳6日(岩崎は団体競技を含めても最年少)。男子の最年少は32年ロサンゼルス大会競泳男子1500メートル自由形金メダルの北村久寿雄の14歳10カ月。団体種目では、84年ロサンゼルス大会女子バレーボールの中田久美が18歳11カ月で銅メダル、88年ソウル大会体操男子団体総合の西川大輔が18歳2カ月で銅メダル。


◆個人種目の日本人10代メダリスト◆


選手名メダル種目年齢
1岩崎恭子92競泳女子200m平泳ぎ14歳6日
2北村久寿雄32競泳男子1500m自由形14歳10月
3宮崎康二32競泳男子100m自由形15歳9月
4小池礼三32競泳男子200m平泳ぎ16歳8月
5田村亮子92柔道女子48キロ級16歳11月
6牧野正蔵32競泳男子1500m自由形17歳3月
7鵜藤俊平36競泳男子400m自由形17歳8月
836競泳男子1500m自由形
9山中毅56競泳男子400m自由形17歳10月
1056競泳男子1500m自由形
11河津憲太郎32競泳男子100m背泳ぎ17歳10月
12萩野公介12競泳男子400m個人メドレー17歳11月
13池谷幸雄88体操男子種目別床17歳11月
14前畑秀子32競泳女子200m平泳ぎ18歳2月
15田中聡子60競泳女子100m背泳ぎ18歳6月
16寺田登36競泳男子1500m自由形18歳8月
17鈴木弘52競泳男子100m自由形18歳10月
18葉室鉄夫36競泳男子200m平泳ぎ18歳11月
19中村美里08柔道女子52キロ級19歳3月
20青木まゆみ72競泳女子100mバタフライ19歳3月
21清川正二32競泳男子100m背泳ぎ19歳5月
22田島寧子00競泳女子400m個人メドレー19歳5月
23赤石光生84レスリングフリー62キロ級19歳5月
24内村航平08体操男子個人総合19歳7月
25道永宏76アーチェリー男子個人19歳9月
26田辺清60ボクシングフライ級19歳11月
27森田智己04競泳男子100m背泳ぎ19歳11月
 大横田勉32競泳男子400m自由形※19歳

※大横田は月日不明。年齢の若い順