プロバスケットボール男子Bリーグの大河正明チェアマン(59)が2季目となったBリーグと、日本のバスケットボール界の現状と未来について語った。24日に、19年W杯出場権を懸けたアジア1次予選が開幕し、日本は初戦でフィリピンと対戦する。20年東京五輪出場のためにも、日本代表の健闘を期待した。【取材・構成=戸田月菜】

 -Bリーグも2季目。1季目の総括と現状は

 大河チェアマン(以下大河) 29日に決算を公表するが、数字としても、初年度としては合格点。ビジネスとして、選手1人当たりの年俸をJリーグやプロ野球に近づけたい。

 -独特の制度とは

 大河 今季からメンター制度を始めた。各クラブ1人の担当者(メンター)を決め、昨季開幕前の研修のフォローをしている。(1)自分たちの報酬出所の確認(2)メディア対応トレーニング(3)SNSや反社会的組織などのリスク管理。研修を実践する継続性が大事。Bリーグとしてよりも、クラブのほうが選手のことを細かに見られる。メンターに研修を行い、Bリーグをよりよくする情熱をもって対応してもらっている。

 -その変化や効果は

 大河 まだ数カ月なのでわからない。メンターが選手は宝という意識でいれば、気持ちにも変化があるはず。他のプロスポーツにはない制度で、つねにBリーグが先に行くという心持ちで取り組んでいる。

 -日本のバスケット界に今後願うことは

 大河 直近では代表が活躍して、東京五輪出場権を勝ち取ってほしい。代表が強くなれば、Bリーグの事業規模も拡大する。ラグビー代表が南アフリカに勝ったようなインパクトがほしい。いずれはドラフトも視野に入れていて、B1の18チームがドラフトできるくらいの層の厚さがほしい。B3と社会人や教員などのリーグをつなげて、上から、B1、B2、B3、地域リーグ、都道府県、と巨大なピラミッド型にする。

 -5年後、10年後のBリーグは

 大河 5年後には、NBAに近い選手を5、6人出すくらいにレベルを上げる。10年後には1万人規模のアリーナを10カ所つくる。バスケを「見る文化」を定着させて、クラブが自由に使え、NBAのように飲み食いしながら観戦もできる部屋もあるアリーナをつくりたい。選手の平均年俸もJリーグを超えたい。

 -若手選手の育成は

 大河 Bリーグのユースチームをリーグ戦にしたい。中学校の部活動より、ユースのほうが伸びる。8月の全国中学校大会は今まで通り部活としての大会。12月のウインターカップを中学生にも広げて選手権にし、部活とユースの両方で出られるようにする。3月にはユースのチャンピオンシップ。これを20年までに整備する。中3の夏で引退して終わりではなく、将来バスケットボール選手を目指せるように。暫定的には部活動とユースの二重登録を認めるが、いずれはどちらかのみになる。とりあえず今現在は大枠は崩さない。

 -東京五輪に向けて

 大河 フィリピン戦は東京五輪への第1歩。ようやく昨年日本のバスケが1つになった。19年年末のFIBA(国際バスケットボール連盟)の中央理事会で東京五輪開催国枠の可否判断が下される。W杯で16強に入ればほぼ確実だけれど…めちゃくちゃ至難の業。FIBAから改善を求められている課題で、残すは代表の強化のみ。W杯予選と本大会での、日本代表の戦いぶりにかかっている。

 ◆日本代表の東京五輪出場までの道のり 13年2月にFIBAからトップリーグの一元化、ガバナンスの改善がなければ、国際大会出場資格停止処分、東京五輪開催国枠の適用を見送ると勧告された。しかし、改善されず14年11月に制裁が執行。以降、川淵三郎前日本協会会長を中心に、協会のガバナンス強化、新リーグ新設に向け取り組み、15年8月に制裁は解除され、16年9月にBリーグが新設された。代表の強化も必須とされ、世界ランク50位の日本は世界で戦える成果を出すことが求められている。東京五輪の出場は12カ国。

 ◆大河正明(おおかわ・まさあき)1958年(昭33)5月31日、京都府生まれ。京大卒業後、81年三菱銀行に入行。10年にJリーグ入りし、14年常務理事に就任。15年に退任後、日本バスケットボール協会専務理事事務総長、Bリーグ理事に就任。16年から同理事長、日本協会副会長。