国際オリンピック委員会(IOC)評価委員会が17日、2016年夏季五輪候補都市・東京の会場予定地をまわった。約20カ所をめぐる強行日程。分刻みのスケジュールの中、東京はあの手この手でアピールした。

 ▽大学生も動員

 バスは午前8時半に東京都内のホテルを出発。IOCの猪谷千春副会長や日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長らも乗り込み、半径8キロ以内にほとんどの会場を配置した「世界一コンパクトな計画」を移動しながら説明。東京の魅力を訴えるとともに、交通渋滞を切り抜けて予定通りに視察できるかも試された。

 中央区晴海の五輪スタジアム予定地と江東区有明の選手村予定地は、広い敷地に建物がない。そのため、晴海では大学の柔道部員ら400人以上がスティックバルーン(棒状の風船)をたたいて歓迎。有明では和太鼓とブラスバンドの演奏で盛り上げた。

 体操などの会場となる江東区の夢の島公園では、ハンドボール人気選手、宮崎大輔(大崎電気)らを招いた小中学生向けのイベントを実施中。視察途中のポポフ委員らは、あっという間に子どもたちに囲まれ「東京にオリンピックください」とラブコールを受けた。

 ▽時間厳守

 ボクシング会場の墨田区の両国国技館では、九重親方(元横綱千代の富士)が委員を握手で歓迎。相撲通で知られるシラク前大統領と親しいというフランスのドリュー委員のたっての希望で、九重親方と2人で写真を撮る一幕もあった。

 前回1964年の五輪スタジアムだった新宿区の国立競技場では、スクリーンに64年五輪の映像を映し、聖火台に火をともして「レガシー(遺産)」をアピールする演出も。ハンドボール会場の国立代々木競技場は、フィギュアスケートの世界国別対抗戦を開催中。VIP席では五輪金メダリストの荒川静香さんや橋本聖子外務副大臣が同席したが、アイスダンスの1組の演技を見ただけで移動する慌ただしさだった。

 天気予報は雨だったが、午後に小雨が降った程度。関係者は「本当にありがたい」とほっとした様子で話した。途中は2グループに分かれる強行軍だったが、ほぼ時間通りに日程をこなすことができた。河野一郎事務総長は「(今日のハイライトは)時間厳守。すごく心配でしたが、今はほほ笑んでいます」とほっとした様子で振り返った。(共同)