7日からの国際オリンピック委員会(IOC)総会を最後に、2期12年の任期が満了となるジャック・ロゲ会長が退任する。サマランチ前会長時代に生じたひずみの是正に力を注いだが、任期終盤は体調を崩して意欲が衰え、トップの座を去る姿には寂しさが漂う。

 「最も満足しているのは、どの五輪でも閉会式でその大会を高く評価する言葉で総括できたことだ」と71歳のベルギー人外科医は思い出を語る。

 サマランチ前会長は21年の在任中、商業化を進めて財政面を立て直したが、参加選手数や競技数が増えて五輪の肥大化を招いた。2002年ソルトレークシティー冬季五輪の招致スキャンダルでIOCの信頼は失墜。ロゲ会長は01年に就任すると肥大化抑制に乗り出し、不正やドーピングを「寛容度ゼロ」の厳しい姿勢で取り締まった。自らの発案で、10代選手への教育に主眼を置くユース五輪を10年に創設した。

 昨年臀部(でんぶ)の手術を受けた後は一気に老け込んだ。あるIOC幹部は「ジャックは体調を崩した後は気力もなえた」と指摘。20年夏季五輪の実施競技見直しでは指導力を発揮せず、伝統競技のレスリングが除外候補になって世界的批判を浴びた。

 リオデジャネイロが選ばれた16年五輪招致はロゲ会長の意向が働いたとされる。だが20年五輪開催都市決定に、去りゆく会長の影響力は感じられなかった。