酒気帯び運転で謹慎していた男子フィギュアスケートの織田信成(21=関大)が、ライバルのコーチを奪った?

 26日、成田空港で会見を開き、今秋のGPシリーズから正式に復帰することを表明した。一方で昨季まで高橋大輔を指導していたニコライ・モロゾフ氏(32)に指導を受けることを明かし、この日、同コーチのいる米ニュージャージー州へ出発した。代表を争うライバルのコーチと契約するという異例の事態に、高橋サイドも困惑を隠せなかった。

 前代未聞の契約だった。成田空港に現れた織田は、モロゾフ氏のコーチ就任を説明した。「バンクーバー五輪に向けてトップになるため、新しいコーチから新しいものを吸収したい」。そのままモロゾフ氏の待つ米国へ出発した。実は同コーチは織田の国内最大のライバルとなる高橋の指導者。五輪出場を争う2人が同じコーチに指導を請うことは現実的にはありえないことだった。

 この契約に高橋サイドは困惑を隠せなかった。今年の世界選手権(3月)の2週間後に日本スケート連盟から相談を受けたが、織田サイドやモロゾフ氏側からは何の連絡もなかったという。その後、織田とモロゾフ氏が一緒に練習しているといううわさを聞いていた。関係者は「さすがにライバルと同じコーチという考えはないと思う。このままいけば(関係を)やめることになる」と話した。

 高橋はモロゾフ氏の指導で昨年の世界選手権で日本男子初の銀メダルを獲得した。欠かせない存在だった。しかし、トップを争うライバルと指導者が重なることは避けたかった。女子の荒川静香と村主章枝がともに佐藤信夫コーチの指導を受けていた時期があったが、結局は荒川が離れている。この日、伊東秀仁強化部長は「高橋君のコーチは未定」と、すでにモロゾフ氏と高橋の関係が微妙なこともにおわせた。

 酒気帯び運転で処分を受けていた織田はこの日、復帰に当たり「たくさんの関係者の方々にご迷惑をかけて申し訳ありませんでした」と頭を下げた。5月中旬の韓国でのアイスショー、6月下旬のドリームオンアイス(新横浜)で滑り、来季のGPシリーズで完全復帰するという。【吉松忠弘】