<陸上:東日本実業団駅伝>◇3日◇さいたま新都心駅東口~熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇6区間42・195キロ

 70歳の小出義雄代表が率いる豊田自動織機が、2時間20分19秒で初優勝を飾った。6区間中3人が区間賞を獲得する走りで、男子選手を抜く場面が2度もあったほど。三井住友海上の連覇を「9」でストップし、全日本実業団女子駅伝(12月13日、岐阜)の連覇へ弾みをつけた。小出代表の今大会制覇は、リクルート、積水化学時代を含めて11年ぶり5度目。有森裕子、高橋尚子らを育てた陸上界の名伯楽は、まだまだ貪欲(どんよく)だ。

 実の娘より若い教え子たちは強かった。首位を独走した3区の新谷、4区の宮崎は同時開催の男子選手を抜いたほど。新谷が「最初は、一般の人が走っているのかなと思いました。近づいたら、『あっ、やばい』と。抜かしていいのかなと思ったけど、ちょっと気持ちよかったです」と言えば、宮崎は「レアな体験をしました」と振り返った。

 昨年の全日本実業団女子駅伝で日本一に輝いたチームは、予選にあたる今大会で初優勝。小出代表にとっては有森擁するリクルートで3度、高橋がいた積水化学で1度勝っており、3チーム目での大会制覇になった。「『お前ら、急いで強くなれ。早くしないとオレが死んじゃうぞ』って言ってるんだ、わはは」と、ひげ面で笑った。

 情熱は衰えない。駅伝の区間配置は天才的。走ることは医師から止められているが「焼酎を飲んで、心臓をドキドキ動かしてるんだよ」と豪快に言う。有望な大学生を勧誘に行ったところ「私、10年はやりたい。その時、監督は生きていますか?」と言われた。「その時、82歳だな。分かんねぇから、急いで強くなれって言うんだ」。

 プロ野球界では、74歳の楽天・野村監督が退任した。「さみしいよね、我々の年代が去っていくのは…。死んじゃうのもいる。ノムさんの(気持ち)は分かるな」。3年後のロンドン五輪に選手を送り出す計画もある。今のところ、指導の現場から離れる予定はまったくない。【佐々木一郎】