<フィギュアスケート:世界選手権>◇4日目◇28日◇モスクワ

 【モスクワ=吉松忠弘】全日本王者の小塚崇彦(22=トヨタ自動車)が、世界選手権初のメダルを獲得した。4回転ジャンプを決めるなど、人生最高の演技という完璧なフリーを演じ、自己ベストの180・79点をマーク。総合でも自己ベストの258・41点で、前日のショートプログラム(SP)6位から銀メダルに輝いた。優勝は世界最高得点のチャン(カナダ)だった。

 体から、思わず熱い魂がほとばしった。人生で最高のフリー。最後のスピンの回転が止まると、小塚は両手でガッツポーズを繰り出した。「今までで一番の演技。これ以上できることはない」。普段から冷静な佐藤信夫コーチが、リンクサイドで両手を突き上げた。

 全く減点がない演技だった。技術点の98・53点は、世界最高で優勝したチャンの96・44点を2・09点も上回った。冒頭の4回転トーループを完璧に着氷すると、連続を含む8つのジャンプを「最後まで落ち着いて、やれることを精いっぱいやろう」と、次から次へと舞い降りた。最後は観客が総立ちで小塚を迎えた。

 小塚は練習やウオームアップで、ストップウオッチを持ち、自分のリズムを計るのが日課。前日のSP前に、全てが少し速いリズムで行動している自分に気が付いた。「焦りまくって、運動会のお父さんのようだった」。フリーでは「足の上に自分の気持ちを置く」ことで落ち着かせた。

 これまでは、フリー後半で疲れが見えた。しかも今回は、日本男子の中でただ1人、予選からの出場。体力面が心配されたが「この大会にピーキングしてきたので問題なかった」。予選から3度の演技を、最高の準備と、焦る気持ちを抑える冷静さで乗り切った。

 14年ソチ五輪に向け、大きな夢が広がった。来季には「フリーに4回転を2回、SPにも入れるなど、どんどん挑戦したい」。開会式で、日本を気遣うロシアの優しさに心を打たれた。「このメダルが少しでも(被災者の方に)勇気を与えられればうれしい」。大きなプレゼントを持って小塚が帰国する。