負けは死と思え-。伝説のレスリング金メダリストが、ロンドン五輪を目指す男子日本代表に「闘魂」を注入した。64年東京五輪で金メダルを獲得した5人が18日、都内のレスリング代表合宿を視察。選手への激励では、渡辺長武氏(71)が「ロンドンまで、命をかけろ」と過激にほえた。フリー66キロ級の米満達弘(25)は、元金メダリストたちの金言に刺激されて男子24年ぶりの金メダルを誓った。

 練習の冒頭、選手たちの前に並んだ栄光の5人が、それぞれ個性あふれる激励の言葉をかけた。過激だったのは186連勝のギネス記録を持つ「アニマル」渡辺氏。「負けは死と思え。死にたくなかったら、世界一の練習をして世界一になれ」。厳しい表情で一気に話すと「八田イズムで金メダルをとった。その見本が5人もいる」と続けた。

 当時の八田一朗会長が金メダル量産のために掲げた「八田イズム」。食事や睡眠まで厳しくし、練習では徹底して鍛えた。「金メダル以外はダメ。銀メダルだと下の毛までそられた」と小幡氏(旧姓上武)。「金メダル以外は死」の思いで地元大会に臨んだ結果、金5個を獲得したのだ。

 ロンドン五輪を目指す選手にも、伝説の金メダリストの言葉は響いた。米満は「すごいオーラを感じた。刺激を受けた」。さすがに「負けは死と思え」という言葉には苦笑いしたが、それでも「もともと金以外は考えていない。銀メダルではダメだと思っている」と話した。グレコ60キロ級の松本も「ロンドンまで、命がけでやる」と、自らに気合を入れるようにいった。

 2大会連続で金メダル2個を獲得している女子に比べ、男子は5大会金なし。吉田氏は「少し寂しい思いもある。ロンドンではぜひ男子にも金メダルをとってほしい」と期待した。佐藤強化委員長は「目の前で話していただいて、選手にも我々にも勉強になった。伝統の重みを感じ、がんばりたい」。目標は金メダルだけ。男子レスリングの思いは、さらに強くなった。【荻島弘一】