<テニス:全豪オープン>◇10日目◇25日◇オーストラリア、メルボルン・ナショナルテニスセンター◇男子シングルス準々決勝

 戦後初の日本男子4大大会ベスト4進出はならなかった。日本のエースで、世界26位の錦織圭(22=フリー)は、同4位で前年準優勝のアンディ・マリー(24=英国)に3-6、3-6、1-6の2時間12分でストレートで敗れた。しかし、1歩もひかないラリー戦や股抜きショットなどで、自身初の全豪センターコートで満員の観客を沸かせた。30日発表予定の最新世界ランクでは自己の持つ日本男子過去最高を更新し、世界20位になる。

 すべてを出し切った。何も残っていなかった。錦織は、トップ4の厚い壁に阻まれ、歴史をつくった快進撃はついに止まった。日本語の「頑張れー」という声が響く中、錦織はセンターコートで散った。「余っている体力を全部出そうと思っていたが、勝つには全然足りなかった」。錦織のフォアのリターンがネットにかかり、日本の夢を乗せた試合は幕を閉じた。

 錦織が理想というスタイルのマリーとの対戦だった。お互いにテクニシャンで策士。カウンター封じのクロスラリーを基本とし、緩急、多彩な球種、コースへの巧みな配球で組み立てる。しかし、大きな違いは身長で13センチ、体重で13キロ上回るマリーのパワーとサーブ力だった。「自分が100%以上の力を出さないと(勝つのは)難しい」。試合としては完敗だった。

 最初の2セットで、合計18ゲーム中、12ゲームが、どちらに転ぶか分からないジュースまでもつれる接戦だった。第1セット0-3からは、積極的な打ち合いを展開。リズムを引き寄せた。「錦織」の声援と手拍子がこだまする。第5ゲームでは、見事な股抜きショットで、マリーを翻弄(ほんろう)する場面もあった。それでも、12度の接戦をものにできたのは4度だけ。最後は力尽きた。

 しかし、今大会の快進撃と、この日見せた互角のラリー戦は、少しも色あせない。「あらためて自分のテニスが十分に通用することが確認できた」。今年の目標だったトップ20入りを、わずか1カ月で達成。課題だった体の強さも「これだけ戦ってきて、痛いところがどこもない」と、確実にたくましくなっている。

 日本男子戦後史上2人目の4大大会ベスト8で、昨年10月から、世界1位のジョコビッチを筆頭に、ツォンガ、ベルディハらトップ10選手を撃破した実力を証明した。03年9月11日に1人で米国へ旅立ってから、8年と4カ月。島根・松江から飛び出した22歳の1人の青年が、日本スポーツ界に新たな歴史を作ろうとしている。【吉松忠弘】

 ◆錦織の今後日程

 全豪の後、2月10日に始まる男子国別対抗戦デ杯クロアチア戦出場のため代表に合流。兵庫のブルボンビーンズドームでの試合が、全豪後の初戦となる。日本は今年、27年ぶりにデ杯の頂点である世界グループに復帰。錦織を中心とした布陣で、世界8強入りを狙う。その後は、これまで米国ツアーに参戦したが、南米で2試合をこなし、好きなクレー(土)コートで得意のストロークを磨く。その後、米国で2大会をこなす。デ杯でクロアチアに勝てば、4月に代表としての準々決勝がある。

 ◆錦織圭(にしこり・けい)

 1989年(平元)12月29日、島根県松江市生まれ。13歳で米国にテニス留学。08年2月に日本男子史上2人目のツアー優勝。昨年11月には、日本男子として初めて世界1位から勝ち星。178センチ、70キロ。自己最高世界ランク24位