プロアマ一体で48年ぶりの五輪金メダルを狙う。ロンドン五輪切符のかかるアマチュアボクシングの女子世界選手権は12日、中国・秦皇島で開幕する。ライト級代表の釘宮智子(20=平成国際大)は3日、埼玉・花咲徳栄高で、WBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志(32)から必殺パンチを伝授された。プロとアマが断絶していた時期もあったが、五輪に向けて協力態勢は強まってきている。五輪出場を逃した内山から夢を託された釘宮は、金メダル奪取を誓った。

 真剣なまなざしだった。五輪出場権がかかる世界選手権は9日後に迫る。釘宮は世界戦5連続KO勝利で「KOダイナマイト」の異名を持つ内山から手取り足取りの指導を受けた。「一発で倒すパンチが欲しかったので勉強になった。得意の左ストレートで決めます」とロンドン切符獲得に手ごたえをつかんだ。

 平成国際大では、内山の恩師で花咲徳栄高監督も兼任する木庭浩介監督の指導を受ける。同じ師を持つ2人は、これまでも一緒に練習したことはあったが、技術指導は今回が初めて。内山は「相手を打ち抜くイメージ。下半身を安定させ、ぶれないように打て」と妹分におしげもなく、必殺パンチを伝授した。

 2年前まではプロからアマへの技術指導は考えられなかった。引き抜き問題などで80年代からプロアマ関係は悪化。一時は完全に断絶状態だった。だが、10年夏、日本アマチュアボクシング連盟の山根明会長と旧知の間柄でもあった日本プロボクシング協会の大橋秀行会長が「一緒に五輪金メダリストを育てよう」と協力態勢を確認。プロアマの壁は徐々に取り払われた。この日の内山の釘宮への指導は、プロアマの協力態勢の象徴的な出来事でもあった。

 64年東京五輪で金メダルを獲得し、今年1月に亡くなった故桜井孝雄氏(享年70)以来、ボクシングでの日本人金メダリストはいない。内山も04年5月のアテネ五輪アジア地区予選で敗退した。「自分が行けなかったから、頑張ってほしい。センス、スピードがあって、気持ちも強い。普段通りやれば勝てる」と妹分に夢を託した。釘宮は「内山先輩が果たせなかった夢を果たして、五輪では金メダルを取りたい」と宣言。ボクシング界はプロアマ一体で、48年ぶりの金メダルを取りに行く。【田口潤】

 ◆釘宮智子(くぎみや・ともこ)1991年(平3)9月18日、奈良・桜井市生まれ。小2で柔道を始め、小6でボクシング開始。奈良朱雀高では全日本選手権3連覇(1、2年はバンタム級、3年はフェザー級)。10年に平成国際大に進学。同年アジア大会は初戦敗退。昨年はプレジデント杯準優勝。台北市杯では日本人女子シニアで初の優勝。家族は母、姉、妹2人。166センチ。

 ◆女子ボクシングのロンドン五輪出場条件

 階級は、フライ級(48~51キロ)ライト級(57~60キロ)ミドル級(69~75キロ)で、世界選手権(中国・秦皇島)のベスト8入りで出場内定。開催国英国はいずれかの階級で1人出場可能。ここに各大陸推薦選手11人を含めた計36人、1階級12人で本大会を戦う。世界選手権には日本から6階級に選手が出場するが、五輪出場の可能性があるのは、フライ級箕輪綾子、ライト級釘宮智子、ミドル級山崎静代。