柔道女子日本代表の国際強化選手15人が、怒りのメッセージを発表した。全日本柔道連盟(全柔連)の臨時理事会を翌日に控えた4日、大阪市内で15人の代理人となった辻口信良(65)岡村英祐(33)の両弁護士が、問題発覚後初めてとなる選手の声明を文書で公開した。園田隆二監督(39)の辞任だけでは問題点が明らかにされていないと指摘し、昨年5月のロンドン五輪代表選手発表について問題視。強化体制を抜本から見直すなどの改革を求めた。

 15人のメッセージには、怒りが込められていた。暴行告発発覚後、初めて選手サイドが声明を発表した。全柔連の臨時理事会を翌日に控えたタイミングで、園田前監督の辞任だけで問題を終わらせない、強い決意がにじんだ。

 「なぜ指導者の側に選手の声が届かなかったのか、選手、監督・コーチ、役員間でのコミュニケーションや信頼関係が決定的に崩壊していた原因と責任が問われなければならないと考えています。前強化委員会委員長をはじめとする強化体制や、その他連盟の組織体制の問題点が明らかにされないまま、ひとり前監督(園田氏)の責任という形をもって、今回の問題解決が図られることは決して私たちの真意ではありません」

 代理人の辻口弁護士によれば、選手たちは、園田氏の監督辞任について「やむをえないですよね」と答えた上で「園田先生だけじゃないですよね」と話したという。辻口弁護士は、全柔連トップの責任について「彼女たちが具体的にいっているわけではない」と前置きした上で「体制そのものへの不満があった。園田さんが責任を一身に背負って幕引きできればいいと思っているなら勘違いでして、選手たちはそう思っていない」と口にした。

 声明の中には「前強化委員会委員長」という表現で、吉村和郎氏を名指しもした。メッセージでは5月のロンドン五輪代表選手発表を問題視。テレビが中継する前で、会場に集められた複数選手の中から吉村氏が代表を発表した。辻口弁護士は「見せ物のようにさらされた。選ばれた人もたまらない。さらに明らかに(代表が)わかっているケースでも呼ばれた。柔道へのリスペクトが全く足りない」と厳しく指摘した。ただその吉村氏は昨年10月に強化委員長を退任し、新設された強化担当理事というポストに“昇格”。「個人名」が出てきただけに選手サイドの不満は大きいことが予想される。

 辻口弁護士によると、1月20日ごろに選手側から「必死で訴えているが、どうもうまくいかない」と相談を受けた。数日後に15人中12人と東京で対面し、代理人となった。選手たちは現時点で訴訟などは考えておらず、全柔連に「指導体制の抜本的な見直し」を求めるとした。また「民主的で風通しのいい柔道界になっていただけるようにしていただきたい。全柔連の理事で女性が1人もいない。国際基準から見ても圧倒的に変」と話し、女性の登用も提案する。園田氏の辞任だけで、問題の幕引きはさせない構えだ。【益田一弘】