<ユース五輪>◇第4日◇19日◇中国・南京

 「フェンシングの申し子」が惜しくもメダルを逃した。女子サーブルで江村美咲(15=JOCエリートアカデミー)が3位決定戦でハンガリー選手に敗れ、4位に終わった。父は88年ソウル五輪代表で北京五輪監督の宏二さん(53)、母は世界選手権代表経験がある孝枝さん。20年東京五輪で金メダル獲得を公言する逸材は、五輪と名がつく舞台での悔しさを糧にする。

 江村の心は6年先に飛んでいた。3位決定戦前、大きな会場の中央に設けられた試合の舞台。「もしこれが自分の国で行われる決勝だったら、どれだけの人が喜んでもらえるだろう」と想像した。「五輪」という名称がつく国際舞台。その第1歩がここだった。

 試合では序盤に7-1と大量リードも、「気持ちが緩んだ」と6連続失点を許す。最終的には13-15の逆転負け。敗戦後には、「いつもは泣かないんですけど」と号泣した。得点すると大声で叫ぶ選手が多いなか、淡々と感情の起伏を見せないクールな試合運びが持ち味だけに、その涙が思いの強さを物語った。

 「同じ失敗をしないで、最終的には東京五輪で絶対に金メダルを取りたい」。「絶対に」と強調するのは、その血筋、自負もあるだろう。両親ともに競技で活躍。有望な中高校生がナショナルトレセン(NTC)に集まり寄宿制で一貫指導するJOCエリートアカデミーに4月に入学。実家はNTCから自転車圏内だが、「厳しいルールや、ジムもある」と決断した。全ては6年後を考えてだった。

 今年1月からは12年ロンドン五輪で韓国を団体金メダルに導いた李コーチの指導も受ける。「自分はタイミングよく20年がある。運を生かしたい」。遺伝子と、世界NO・1の指導力が交われば、快挙も見えてくる。【阿部健吾】

 ◆江村美咲(えむら・みさき)1998年(平10)11月20日、大分県生まれ。小4から競技を始める。志村二中から大原学園高に進学し、エリートアカデミーで練習を積む。最初はフルーレで、サーブルは中学から。「大会の景品のパズルがほしくて」と参加した大会で優勝し、転向した。7月のアジア選手権2位。趣味は音楽鑑賞。167センチ、52キロ。