<レスリング:世界選手権>◇第2日◇9日◇タシケント

 男子フリースタイル74キロ級の高谷惣亮(そうすけ、25=ALSOK)が銀メダルを獲得した。強豪ひしめく同級(97~01年は76キロ級)で日本勢の五輪、世界選手権でのメダルは、96年アトランタ五輪銅の太田拓弥以来18年ぶり、世界選手権では75年の伊達治一郎以来39年ぶり。決勝ではロンドン五輪銅メダルのデニス・ツァルグシュ(ロシア)に敗れたが、レスリング界随一のイケメンが大きな仕事をした。高谷惣の弟で65キロ級の高谷大地(拓大)は3回戦で敗れた。

 甘いマスクにマッチョな肉体を備えた高谷惣が快進撃をみせた。2回戦でロンドン五輪銅メダリストにテクニカルフォール勝ちして勢いに乗ると、準決勝は第1ピリオド(P)で0-1と劣勢も、第2P3分42秒にタックルを決め、3-1で逆転勝利。決勝は09、10年世界王者ツァルグシュにタックルを見切られて2-8で敗れ「金メダルがほしいと言っていたので、悔しい」と顔をしかめたが、長く苦戦が続いた日本の中量級に大きな風穴をあけた。

 74キロ級は欧米選手の層が厚く壁は高かった。得意技から「タックル王子」と高校時代から将来を期待された高谷惣もロンドン五輪は初戦敗退。昨年大会は7位で、男子フリーは他階級もメダルなしに終わり「本当にまずい。レスリングが女子の競技だと思われてしまう」と使命感を持って現地入りしていた。

 女子の吉田、伊調と同じALSOK所属。吉田のガードマンと間違えられたり、同社のCM撮影では吉田の真後ろで髪しか映らない試練も味わってきた。「目立ちたいですよ」と、男子でも人一倍燃えていた。

 「東京中のパンケーキ屋は行き尽くした」と豪語するほど大好きだったスイーツも断って、体脂肪率は8%以下。8月中旬から始めた新たなフェイントやタックルも体得した。初出場の弟大地とともに臨んだ大舞台。「決勝の相手はやっぱり強かったが、タックルは前より入れたので、もうちょっと。リオデジャネイロ五輪では高谷兄弟2人で金メダルを取りたい」。日本の救世主となるべく、あと一段、表彰台を上がってみせる。

 ◆高谷惣亮(たかたに・そうすけ)1989年(平元)4月5日、京都府生まれ。小学校時代は空手で黒帯取得も、兄弟の影響で中学1年で本格的にレスリングを開始。網野高では総体優勝。拓大時代の11年全日本選手権で初優勝すると、13年まで3連覇。弟大地はフリー65キロ級代表で、今回の世界選手権には兄弟そろって出場。大のアニメ好きで大会前に「勝ったら『ジョジョの奇妙な冒険』のジョジョ立ちをします」と予告。177センチ。

 ◆決勝進出メモ

 世界選手権での日本男子の決勝進出は11年大会フリー66キロ級の米満達弘以来。過去の五輪、世界選手権で決勝に進んだ日本勢は軽量級がほとんどで、73キロ以上の階級では84、88年五輪連続銀の太田章以来。世界選手権では70年銀の佐々木龍雄以来。