日本サッカー協会最高顧問の川淵三郎氏(78)が、「コペルニクス的転回」で改革を進めていく決意を示した。国際バスケットボール連盟(FIBA)は28日、日本協会の改革を主導する10人のタスクフォース(特別チーム)を発表した。FIBAワイス財務部長とともにチェアマンに就任した川淵氏は、都内での第1回会合後に会見。出場停止処分を受けているリオデジャネイロ五輪予選の出場を見据え、約4カ月での問題解決に強い意欲を示した。

 78歳のチェアマンが顔を紅潮させながら決意表明した。FIBAから無期限の国際試合停止処分を受けた日本協会の改革。約4カ月後には男子のリオデジャネイロ五輪予選が迫る。

 川淵チェアマン

 残された人生はあまりありませんが、改革のために全力をささげたい。6月までにやり遂げないと選手は五輪予選に出られない。プレイヤーズファースト(選手主義)。選手のために努力したい。

 焦点となるのは(1)協会のガバナンス(組織統治)(2)男子リーグのNBLとTKbjの統合(3)男女代表チームの強化体制確立の3点。川淵チェアマンはリーグ統合を第一に取り組む。モデルは市民、行政、企業の三位一体で地域密着のクラブチームを作り上げたサッカーJリーグだ。バスケットの競技者登録人数は野球、サッカーに続く約60万人。「Jに続くプロリーグの可能性を秘める。強い意志を持っていく」と続けた。

 FIBAに普及・強化の観点から「1国1リーグ」を指示されて6年。日本協会中心の議論は堂々巡りだった。状況は簡単ではないが、川淵チェアマンはひるまない。「コペルニクス的転回。行き詰まった状況も、180度変えてしまったら、いい方向にいく。常識を外れてもいい」と、Jリーグ設立の経緯を振り返りながら言った。

 Jリーグ創設前、国内には1万人規模のスタジアムはほとんど皆無だった。そんな中で川淵チェアマンは「1万5000人のスタジアム」を加入の条件に掲げた。周囲から「無理」「不可能」との声が聞こえたが、やり抜いた。当時の口癖は「時期尚早と言ったら100年たっても時期尚早」「考えて走ったら遅い。走りながら考えればいい」。今回も「5000人規模の会場と提案したら“1500人も入らないのに”と言われた」と逆に発奮材料にしている。

 現在のTKbjリーグのプロ選手の年俸は500万円以下がほとんど。川淵チェアマンは選手の待遇改善も重要課題に挙げた。「今のような給料では魅力あるプロとは言えない。平均1000万円以上はもらわないとプロとはいえないし、夢のあるリーグとはいえない」。リオ五輪予選に間に合わせるためには6月上旬までの解決がリミット。「Jリーグのときは5年あったが、今回は4カ月ちょっとしかないが、解決できないわけがない」。死力を尽くしてサッカーに続くプロリーグを作り上げる。【田口潤】

 ◆コペルニクス的転回

 18世紀のドイツの哲学者カントが用いた言葉。15世紀にポーランドの天文学者コペルニクスが天動説ではなく地動説を唱えたことに由来し、常識とされた物事の見方が180度変わる場合を指す。

 ◆男子バスケットボールの2つのトップリーグ

 94年、将来のプロリーグを見据えて日本リーグ機構(JBL=現NBL)が設立されたが、廃部が相次ぎ、リーグ自体のプロ化は進まなかった。そんな中、プロリーグ設置に積極的だった新潟と埼玉が04年8月にJBLから脱退。同11月に「日本初のプロリーグ」としてbjリーグを創設。05年11月、6チームで開幕。FIBAから「1国1リーグが望ましい」との指摘を受けた日本協会は08年に1リーグ制への検討委員会を設置。以来、議論をしてきたが統一は実現できていない。