<バレーボール:ロンドン五輪世界最終予選兼アジア予選女子大会>◇最終日◇27日◇東京体育館

 「火の鳥ニッポン」が土俵際で3大会連続の五輪出場を決めた。世界ランク3位の日本は同6位セルビアに2-3で敗れ、4勝3敗の4位。辛くもフルセット負けで「勝ち点1」を上積みしたため、勝ち点12で並んだタイをセット率で上回った。「3位以内を除くアジア最上位」で何とかラスト12枚目のロンドン五輪切符を獲得。エース木村沙織(25=東レ)が絶不調に終わるなど、7大会ぶりのメダルへは多くの課題が残った。

 「火の鳥」は死なずに済んだ。日本がロンドンへの狭い道を、何とかくぐり抜けた。「勝ち点1」が絶対条件だったセルビア戦。第3セットを奪って最低条件の「2セット奪取」をクリアすると、選手は安堵(あんど)の笑みを浮かべた。その後は気が抜けたような逆転負け。しらけムードが漂う試合後のコートに笑顔はなかった。「おめでとうございます」と言われた真鍋監督も「ありがとう、と言っていいのでしょうか」と苦笑するしかなかった。

 エースが羽ばたけなかった。指揮官が「世界一のサイドアタッカーになれ」と命じた木村は、この日も11点に終わった。スパイク決定率は16・3%。大会を通じ金軟景(韓国)とガモワ(ロシア)に次ぐ3番目の計114点をマークしたが、決定率33・2%は18位。「ボールが上がってきたときに応えられなかった。悔しいです…」。課題のサーブレシーブも改善できずに唇をかんだ。

 昨年亡くなった松平康隆バレー協会名誉会長の「遺言」がある。「何か5つの世界一がないと金メダルは狙えない」。同氏は「セッター竹下と木村の“サーブは”世界一」と言った。真鍋監督は数字が出るサーブ、サーブレシーブ、ディグ(スパイクレシーブ)の3部門とともに、木村に「サーブを含めた」世界一を期待する。指揮官は「木村の復活なくしてメダルはない」と語気を強めた。

 午前中の練習後にタイの勝利を知った。試合前の五輪決定はなくなった。真鍋監督は「みんな萎縮してるぞ。もう1度、点を取ったら輪になって喜びを共有しよう」と呼び掛けた。エースの不調を「全員バレー」でカバー。結果的にどこかの試合で1セット取れず、同時に1セットを失っていれば、タイのセット率を下回っていた。

 絶対的アドバンテージはあった。ホームで声援に包まれ、試合は毎日、最終4試合目に固定された。開催国特権で7試合中2試合は相手を指名。数々の有利を持ちながら苦しみ、森田淳悟強化事業本部長は「木村はたくましさが足りなかった。木村、竹下、佐野が日本の核。この3人がもっとたくましくならないと」と苦言を呈した。

 セッター竹下は体調不良で会見を欠席した。精根尽き果てながらつかんだ五輪切符。公言していた「1位通過」どころか、「アジア枠」での出場になった。木村は「個人的にはサーブレシーブをしっかりして、もっと点数を取れるようにしたい」と前を向いた。本番まで残り2カ月。あれもメダルへの苦しみだったと、笑えるようにしなければならない。【近間康隆】

 ◆大会方式とロンドン五輪出場国

 8チームの総当たり戦で、上位3チームが五輪出場決定。残り5チームの中のアジア最上位を加えた計4チームが五輪切符を獲得。順位は勝ち点制で、3-0と3-1の試合は勝者が勝ち点3、敗者は0。3-2では勝者が2、敗者が1。勝ち点で並んだ場合は(1)勝利数(2)セット率(得セット÷失セット)(3)得点率の順で決まる。ロンドン五輪は12チームで実施。今大会前に開催国英国とW杯上位のイタリア、米国、中国、各大陸予選王者のトルコ、ドミニカ共和国、ブラジル、アルジェリアが出場を決めていた。