<大相撲名古屋場所>◇13日目◇24日◇愛知県体育館

 横綱白鵬(24=宮城野)が、大関琴欧洲(26)との1敗対決を制して、賜杯奪回へ大きく前進した。先場所、連勝を「33」で止められた相手を冷静な取り口で上手投げで破り、綱の意地を見せつけた。25日の14日目で大関日馬富士(25)に勝ち、琴欧洲が横綱朝青龍(28)に敗れれば、2場所ぶり11度目の優勝が決まる。

 狙っていた。白鵬は琴欧洲が出てくるのを待っていた。右四つに組みながら、前に出していた右足をすすーっと引く。その瞬間、長身大関は勝負をかけて寄ってきた。「タイミングを待っていた」。引いた右足を軸にして体を開き、左上手に力を込めた。前日の魁皇戦で「電気が走った」という左ひじの不安を感じさせない豪快な上手投げ。自分も桟敷席まで飛んでいくほどの勢いだった。

 立ち合いで勝った。両手をつき、琴欧洲が立つのを待った。右をねじ込み、左上手をつかんで「すぐに自分の形になりましたね」。琴欧洲には先場所14日目に連勝を「33」で止められ、場所前9日の出げいこでも4勝4敗。「そう言えば、そうだっけ」ととぼけるように慌てなかった。「昨日は昨日、今日は今日」と横綱らしい余裕を漂わせた。

 しかし、舞台裏では、白熱するV争いにデリケートになっていた。東の正横綱として、2場所続けて大関(先場所は日馬富士)に優勝を許すわけにはいかない。前日には関係者に「眠れないんです。酒を飲んでも、夜中に起きてしまう」と訴えていた。時には朝まで眠れないほどだという。だが、起きている時間も無駄にはしない。歴代横綱のVTRを見詰め、取り口だけでなく土俵入りも研究するという。

 「綱」のこだわりは、土俵入りからだ。締める「綱」は、部屋を再興した43代横綱吉葉山のように、背中の結び目を丸くした。しこは、大鵬のようにヒザを沈ませる。塵浄水では、35代横綱双葉山のように両手を大きく1回転。今場所からはかしわ手を指を開いて打ち、せり上がりは腕を前方に伸ばす。「1日2番取る感じ」という土俵入りで細部までこだわる。新横綱だった2年前に約1分40秒だった土俵入りは、今場所は2分を超えることもある。

 昨年名古屋場所から7場所連続で12勝以上をマーク。朝青龍(04年九~05年九)に並び歴代5位だ。「定位置」の単独トップ、2場所ぶりの優勝が見えた、の問いに「まだ見えてない、何をおっしゃいますか」とおどけた。残る2日の相手は日馬富士と朝青龍。「自分の相撲を取りきることに集中してやれば、いいんじゃないかと思う」。自分の相撲を取れば勝てる、という自信がみなぎっていた。【近間康隆】