日本相撲協会は29日、東京・両国国技館で大相撲九州場所(11月14日初日、福岡国際センター)の番付編成会議を開き、新十両4人を含む十両昇進力士6人を発表した。

 苦節9年半、剣武(つるぎだけ、31=武蔵川)が学生相撲出身では史上最もスロー出世で関取となった。日体大から01年春場所で初土俵。所要58場所での新十両は、従来の記録だった花ノ藤(日大)の40場所を大きく上回る。幕下上位で迎えた5月の夏場所は、勝ち越しながら「入れ替え戦」と呼ばれる十両下位との対戦に敗れ、7月の名古屋場所は3勝4敗で負け越すなど昇進を逃し続けただけに「あきらめなくてよかった」と満面の笑みを見せた。

 これまでに網膜剥離(はくり)の手術を左目3度、右目1度受けた。「左目は白内障で曇って見える。でも、これを手術したら相撲は続けられない」と命がけで土俵に立ってきた。03年9月、網膜剥離手術で入院中、日体大の同級生で同部屋の垣添がテレビの新入幕インタビューで「入院している宮本(剣武の本名)のために頑張る」と語った。「やめようと思っていたけど、もう1度頑張ろうと思った」。新十両昇進を最初に伝えたのは垣添だった。

 師匠の武蔵川親方(元横綱三重ノ海)は、30日の相撲協会理事会の承認を経て、藤島親方(元大関武双山)へ部屋を譲り、部屋の名称も「藤島部屋」に変更される。「手はかかったけど、最後の場所で関取になれてよかった」。普段は厳しい師匠の笑顔に、剣武も「若くないけどいずれ幕内を目指したい」と笑った。