2度目の先発で、ロッテ佐々木朗希投手は初勝利をマーク。高卒2年目で勝つのだから大したもの。しかし勝ったという以外の数字は、5イニングで4失点。初対戦は投手が圧倒的に有利なだけに、1軍で投げるローテーション投手の内容としては、いまひとつとも言える。現状で評価するのが難しい結果であり、内容でもあった。

佐々木朗希、27日阪神戦の球種
佐々木朗希、27日阪神戦の球種
佐々木朗希、16日西武戦の球種
佐々木朗希、16日西武戦の球種

まず、19歳の投手としての資質は文句なし。軽く投げているように見えて、150キロを超えるのだから、素晴らしいポテンシャルを持っている。変化球を見てもフォークの落差はあるし、スライダーにもキレがある。単純に勝利だけを考えたら、変化球の比重を多くするだけで勝てるだろう。

ただ昨年、プロ入り1年目のシート打撃を視察した際のピッチングは、ド肝を抜かれた。後ろから見ていても怖いぐらいの迫力があり、「将来はどんな投手になるのだろう」と衝撃を受けた。それに比べると、まとまりは出てきたが、物足りない印象を受けるというのが正直な感想だった。

個人的に思うのは、1軍のマウンドは育成の場所ではない。そういう目で見ると、まだまだ勝ちを想定して送り出せるほどの内容ではない。3回裏2死二塁、サンズに対して初球が捕逸になった。外角を狙ったスライダーが逆球になり、変化の軌道も正反対に曲がったもの。捕手の立場で言うと、フォーク、スライダーの軌道が一定せず、捕球が難しい。これでは弱点のある打者を打ち取る計算が立たない。

阪神対ロッテ 力投するロッテ先発の佐々木朗希(撮影・清水貴仁)
阪神対ロッテ 力投するロッテ先発の佐々木朗希(撮影・清水貴仁)

真っすぐにも課題がある。5回1死、マルテの3球目は内角を狙って投げた真っすぐがワンバウンド。右打者の内角には、外を狙った真っすぐが抜け気味の逆球で内角にいくぐらい。捕手も要求していなかったように、ほとんど投げられていなかった。その半面、3回無死フルカウントから左打者の中野に投げた内角の真っすぐは素晴らしかった。判定はボールで四球になったが、あれは打者が手が出なかっただけ。見逃し三振でもよかった。この真っすぐがコンスタントに投げられれば、左打者の攻略が楽になるだろう。

阪神対ロッテ 甲子園球場でプロ初勝利を挙げた佐々木朗(右)は井口監督とウイニングボールを手に記念撮影に納まる(撮影・上山淳一)
阪神対ロッテ 甲子園球場でプロ初勝利を挙げた佐々木朗(右)は井口監督とウイニングボールを手に記念撮影に納まる(撮影・上山淳一)

厳しい言い方になるが、1軍は結果を残してナンボの世界だと思っている。先に触れたように、佐々木朗は現時点での実力でも変化球の比重を多くしたり、真っすぐを右打者の内角へ投げられるようになるだけで勝つ確率は上がると思う。ただし、目先の勝利にとらわれ、小手先のピッチングをする投手にはなってほしくない。スケールの大きな投手になってほしい。(日刊スポーツ評論家)