谷繁元信氏(50=日刊スポーツ評論家)が大混戦のセ・パの優勝ラインを占った。ヤクルト、オリックスともに昨季の最下位チームが首位に立つ「超下克上」の展開。優位ではあるが、残り約20試合の勝率5割ペースは容易ではないと説いた。キーマンの働きがラストスパートの命運を握る。
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この時期になると優勝ラインが紙面に載る。よく仮定で「首位チームが残り試合を勝率5割で行けば…」と言われる。セ・リーグも一見すればヤクルトが残り20試合を10勝10敗の勝率5割なら、2位阪神が上回るには11勝6敗が必要になり、がぜん有利に思える。だが当事者の感覚からすれば終盤の勝率5割キープは決して簡単ではない。少しでもチームの調子が崩れれば、20試合を借金2、3で終えることもある。ましてヤクルトは対戦成績で大きく負け越している阪神、巨人との対戦を11試合も残す。
優勝ラインを維持するためにカギとなる選手は正捕手で6番を打つ中村悠平だ。今季は己のプレースタイルを表現できるようになった。捕手の時はキャッチングやジェスチャーで自分の意思を的確に伝えられることが増えた。打撃でも場面に応じて役割を高い確率でできるようになった。
広島戦ではベテラン石川を6回途中までしっかり導いた。初回、好調な小園に初球は外角ボール球で様子を見て、直球を待つ可能性が高い2球目は外角スライダーでカウントを奪った。3球目は内角シュートで揺さぶり「次は外角に来る」と思わせて同じ球を内角に続けてファウルを稼いだ。コースを張らせにくい状況を整え、勝負球は低めのチェンジアップで空振り三振。左対左のお手本のようなリードもできるし、今季は「ここでこの球が来るか」と裏を欠く場面も見られる。相手が中村のリードを意識するようになっている。
打撃でも得点には結びつかなかったが、6回のオスナの併殺直後の四球は流れを渡さないためにも大事な出塁。同点の8回1死一、三塁で凡打に終わり、こういう局面で勝負を決めることが優勝を大きく手繰り寄せることになる。
阪神は先発陣に高橋が戻り、投手陣の救世主となった。だが逆転優勝には打線の起爆剤がいる。下位打線は選手を入れ替えているが機能しておらず、1~5番頼みとなっている。試せる選手も一巡した今、ルーキー佐藤輝明がトンネルを抜け出した時の爆発力に期待してスタメンで起用し続けた方がいい。前半戦の快進撃は佐藤輝の打撃が要因の1つだったし、ヤクルトを逆転するには必要だ。
巨人は引き分けに持ち込んだが、状況的に苦しさは変わらない。ヤクルトとの直接対決が6試合、残されているのが頼みの綱となる。(日刊スポーツ評論家)




