阪神が守備の乱れで終戦した。3点リードの7回に2失策と4四死球で一気に5点を奪われ逆転された。3位からの下克上を狙ったが、3連敗で1勝もできず王者ヤクルトにスイープされた。今季限りで退任する矢野燿大監督(53)の最終ゲーム。日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(38)は好機で犠打を指令された佐藤輝明内野手(23)に、絶対的主砲への成長を願った。【聞き手=佐井陽介】

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両チーム無得点の2回無死一、二塁、6番佐藤輝明選手への犠打指令には驚かされました。もちろんエース青柳投手と難敵ヤクルト高橋投手の投手戦が予想される中、手堅く1点をもぎ取りたい意図はよく分かります。ただ、投手目線で考えれば、あの場面で強打者にバットを寝かせてもらえると「めちゃくちゃラッキー」だと感じるものです。

仮に不調だとしても、佐藤選手には出合い頭の1発があります。左打者は引っ張るだけで進塁打にできるし、打球が速いのでゴロが内野手の間を抜ける確率も高くなる。決して犠打に失敗した結果論で言うわけではなく、高橋投手も打ってこられた方が嫌だったのではないでしょうか。1球1球に相当警戒しなければならない打者が、しかも慣れないバントを選択してくれると、投手は楽になるもの。それは2者連続四球の後であればなおさらです。

さらに言えば、あの場面のバント選択で、高橋投手は「あっ、この選手は本当に調子が悪いんだな」と脳裏にインプットしたはずです。前日13日のファイナルステージ2戦目はベンチスタート。そして、この日は好機で犠打指令を出されたとなれば、そう考えるのが自然です。佐藤選手は4回無死一、三塁、再び高橋投手を相手に初球の内角直球で詰まらされて三邪飛。気持ちの面で高橋投手に優位に立たれていた可能性もあったのではと感じました。

結局、チームは痛恨の逆転負けで終戦。佐藤選手は6回に内野安打こそ記録しましたが、不完全燃焼の22年最終戦となりました。この悔しさをどうか忘れることなく、オフの鍛錬につなげてほしいと思います。この日のような場面でも首脳陣が「絶対に打たせたい」と迷わない主砲に成長してくれることを、いちOBとして願ってやみません。(日刊スポーツ評論家)

ヤクルト対阪神 2回表阪神無死一、二塁、バントを試みる佐藤輝(撮影・河田真司)
ヤクルト対阪神 2回表阪神無死一、二塁、バントを試みる佐藤輝(撮影・河田真司)
ヤクルト対阪神 2回表阪神無死一、二塁、送りバント失敗した佐藤輝(左)(撮影・江口和貴)
ヤクルト対阪神 2回表阪神無死一、二塁、送りバント失敗した佐藤輝(左)(撮影・江口和貴)
ヤクルト対阪神 2回表阪神無死一、二塁、バントで出塁する佐藤輝(撮影・河田真司)
ヤクルト対阪神 2回表阪神無死一、二塁、バントで出塁する佐藤輝(撮影・河田真司)