広島森下暢仁投手がまた1つ段階を上げた。

前々回登板、サヨナラ負けを喫した前回登板をへて、投球回を重ねるごとに状態が戻ってきている。この日は立ち上がりにピンチを招いたものの、2回以降は本来の投球を取り戻した。フォームのバランスが良く、直球に力強さがあり、カットボールなどの変化球にも切れがあった。登板を重ねて、術後の不安はなくなった。今後さらに投球内容は上がっていくに違いない。直球やカットボールの球質が上がれば、投球のアクセントとなるカーブの抜け方ももっと良くなるだろう。

8回からは今季チームを支える中継ぎにつないで、逃げ切った。森下自身に勝ち星がついたことが何より大きい。好投を続けていたとはいえ、やはり白星がつくかつかないかは大きな違い。チームとして、いい形で勝利をつかんだ。ただ、個人的には、8回のマウンドにも立ってもらいたかった。7回まで105球。この日の投球内容であれば、続投は可能だったように感じる。ベンチの様子からは、7回裏の攻撃が始まる前に交代が決まっていたようだった。あの時点ではまだ、両軍無得点。結果的に得点したとはいえ、ヤクルト先発ピーターズの内容も良かっただけに、自ら決着をつけさせる選択があってもいい。

前回阪神戦はそうだった。もちろん、ゲームプランや森下の体調面を考慮しての交代だとは思う。ただ、来週から交流戦が始まる。今季なかなか先発陣の柱が確立できていないだけに、存在感が増している森下に自覚を持たせる意味でも8回も続投してほしかった。術後の影響がないことは投球で証明した。ここからさらに投手としての階段を上がっていくためにも、チームの中の立場を確立していってもらいたい。【日刊スポーツ評論家】