負けられない「大一番の試合」は、長いペナントでは必ずある。結果に関係なく、そういう試合でどう戦えるのかがチームの強さに直結する。大一番の試合に慣れていない楽天の“もろさ”が、連敗を招いてしまった。

序盤の楽天の攻撃を見て「これはまずいぞ」と思った。初回、小深田と村林が初球の甘い真っすぐを見逃してストライク。3回も先頭打者の鈴木大が初球の甘いスライダーを見逃し、太田と小深田が初球のストレートを見逃してストライクになった。明らかに硬くなり、積極的にバットが出てこない印象を受けた。

ソフトバンクの和田は、ドンドンとストライクを投げて勝負する左腕。このタイプの投手に対し、初球の甘い球に手を出せなければ得点など入らない。6回はスタミナ切れで、1死から村林と島内に連続安打。1ボールからのファーストストライクを痛打されたが、ここで和田はお役御免で降板し、5回1/3無失点だった。

和田と対戦した楽天打者は、初球の真っすぐで見逃しストライクが5球。変化球の見逃しストライクも4球あった。初球のストライクが14人いて、そのうちの9人が見逃しストライクだった。試合終盤に3得点したが、和田を打ちあぐんで手遅れになってしまった。

大事な試合になればなるほど、打者は初球から手を出しにくくなる。そういう試合ではベンチから「ファーストストライクを狙え」という指示があっていいし、特に和田の特長を考えればなおさらだろう。選手の負担を軽くしてやるのがベンチの仕事で、思い切ってバットを振って勝負できる状況を整えてやるべきだった。

楽天打線は得点能力を持っているチーム。四球、盗塁、犠打はリーグトップで、三振はリーグ最少。ここまで503得点で、ソフトバンクの530得点に次いで2位の得点力。それだけにもったいなかった。

ちなみに今試合のソフトバンクは10安打のうち、8回もファーストストライクから仕かけた。最終的に初球を打ちにいった打席はすべてをヒットにしている。指示が出ていたかは分からないが、楽天より大一番に“場慣れ”している印象だった。

そしてもうひとつ、先発した則本が初回に3失点。前日の試合でも先発した田中将が初回に2失点している。立ち上がりが難しいのは分かるが、大事な試合で先制点を与えてはいけないという反省も必要だろう。

ロッテを含めたCS争いは、ソフトバンクが1歩抜け出した。自力CS出場がなくなった楽天だが、ロッテも負けたため、ゲーム差は0・5のまま。まだまだチャンスはある。負けられない試合を乗り越え、最後までスリリングな試合を見せてもらいたい。(日刊スポーツ評論家)