ソフトバンクのCSファーストステージ初戦の先発は、スチュワートだった。予告先発で分かっていたとはいえ、違和感は残ったままだった。

そしていきなり先頭打者の荻野にホームランを浴びた。まだ勝負は始まったばかりとはいえ、緊迫感のある短期決戦のスリルは吹き飛んでしまった。

はっきり言えば、スチュワートというピッチャーは、プレッシャーのかかる試合を任せられるほどの実力がない。力んで投げた初球のストレートがワンバンでボール。上半身が突っ込んでしまう投球フォームで、力を入れて投げると引っかけてしまう欠点がある。本人も分かっているだろう。それで引っかけないように投げると、体は開いてしまうし、球の力もなくなる。打たれた真っすぐは150キロの球速表示だったが、バッターは数字ほどのスピードは感じない。あっさりホームランにされてしまった。

ポランコにもソロを浴び、3回には3四球を与えて交代。その後、1死満塁でポランコの当たりはショートゴロ。併殺狙いで今宮から送球を受けた三森が一塁へ悪送球し、このイニングも2点を失った。もちろん、三森もしっかり投げなければいけないし、ファーストの中村晃も捕れないまでも前にはじいてほしかった。しかしこのプレーに限らず、ソフトバンクの選手からは闘争心を感じなかった。

チームに覇気を感じないのは、スチュワートに先発させた影響があると思う。仕切り直しになるポストシーズンの初戦に先発するような投手は、野手に勇気を与える存在でなければいけない。しかしスチュワートは自信がなさそうに見えるし、今季の勝ち星は3勝。ロッテ戦は0勝2敗で防御率も7・20。調子がいいときの球は目を見張るものがあるが、投げてみなければ分からないタイプ。1勝1敗で後がなく、開き直って投げられる状況ならいいが、とても“開幕”に投げる投手ではない。

パのCS出場権をかけた戦いは、最後の最後までもつれていた。最終戦を迎えた状況でやりくりは難しかっただろうが、その前からCS初戦の先発を見越し、逆算してやりくりすれば、有原か和田には任せられたと思う。

ロッテの先発・佐々木朗を打ち崩すのは難しいが、短いイニングしか投げられないのは分かっていたはず。先発がある程度、粘れれば勝機はあった。気持ちを切り替え、第2戦から戦ってもらいたい。(日刊スポーツ評論家)

ロッテ対ソフトバンク 3回裏途中、ソフトバンク先発スチュワート(手前右)の降板を告げ、ベンチで厳しい表情の藤本監督(右)(撮影・江口和貴)
ロッテ対ソフトバンク 3回裏途中、ソフトバンク先発スチュワート(手前右)の降板を告げ、ベンチで厳しい表情の藤本監督(右)(撮影・江口和貴)
ロッテ対ソフトバンク 1回裏を投げ終え、先制を許したソフトバンク先発のスチュワート(右)は浮かない表情でベンチへ引き揚げる(撮影・滝沢徹郎)
ロッテ対ソフトバンク 1回裏を投げ終え、先制を許したソフトバンク先発のスチュワート(右)は浮かない表情でベンチへ引き揚げる(撮影・滝沢徹郎)