野球において「フルカウント」からの1球が明暗を分けるのはよくあることだ。それだけ3ボール2ストライクというのは、ゲームの中で大事な意味を持つ繊細なカウントだと思っている。

阪神がオリックスに大勝したのは、森下、佐藤輝の本塁打のインパクトが大きい。だがクリーンアップの主軸だけで勝てるわけではない。そこであえてクローズアップしたいのは、3回の坂本のフルカウントからの一打だ。

0-0の3回の坂本は先頭打者だった。オリックス先発曽谷に対し、2球をファウルにするなど、カウントを3-2まで持ち込んだ。そして、8球目の球速148キロのストレートを左前にはじき返したのだ。

わたしは3-2になった打者に「ボール球を振るな」とは言わないほうだ。だが均衡した局面でのフルカウントというのは、個人のカウントではない。「チームのカウント」だと思っていた。

この回、先頭になった坂本は、フルカウントだから四球も、三振も、ヒットもあった。そこをしぶとく三遊間を破って出塁したことに意味があった。オリックスにはイヤな感じをもたせた安打でもあったわけだ。

続く8番小幡がエンドランのかかった左前打でつないだ。伊原がバント失敗、近本三振に倒れたが、中野が左前適時打。森下が左越え3ランを浴びせた。この先制攻撃の起点になったのは坂本だった。

交流戦をみていると、阪神の各打者はそれぞれが役割を果たそうとしているのがうかがえる。「打線」というものを意識した戦いでは、阪神が上だった。(日刊スポーツ評論家)

阪神対オリックス 3回裏阪神無死、坂本は左前打を放つ(撮影・上山淳一)
阪神対オリックス 3回裏阪神無死、坂本は左前打を放つ(撮影・上山淳一)
阪神対オリックス 3回裏阪神2死一、二塁、坂本は中野の左前適時打で生還する。左は森下(撮影・宮崎幸一)
阪神対オリックス 3回裏阪神2死一、二塁、坂本は中野の左前適時打で生還する。左は森下(撮影・宮崎幸一)