<SMBC日本シリーズ2018:ソフトバンク5-4広島>◇第5戦◇1日◇ヤフオクドーム

ヤフオクドームで懐かしい人物に出会った。「いやあ、本当は投球を見るのはドキドキしてしまって。心配で見ることができないんですけどね」。そう言って苦笑いを浮かべたのは九州共立大の元野球部監督の仲里清氏だった。メガネの奥の瞳は心配げでもあり、とはいえ大きな期待感に満ちているようでもあった。広島先発・大瀬良の大学時代の恩師である。4年間、手塩にかけて育てた右腕の晴れ姿。シリーズ2度目となる先発マウンドに期待と不安が入り交じりながら声援を送った。シリーズ初戦(マツダスタジアム)で先発した大瀬良は5回2失点。失策絡みで失点した場面では「何やってんだ!」と広島の守備についついテレビに向かって叫んだという。「『チケット取りましょうか?』と大瀬良に言われたけど、自分で来ました。今日は申し訳ないけど、カープを応援させてもらいます」。そう言って球場に消えて行った。教え子は粘投したものの、引き分けとなった初戦と同じように勝ち負けは付くことなくマウンドを下りた。

スタンドで手に汗握ったのは教え子を見守る恩師だけではない。文字通り「緊迫戦」となった。回が進むにつれてベンチの動きも慌ただしくなった。工藤ホークスは1点を追う7回に明石が起死回生の1号同点ソロを右翼テラス席に運んだ。再び敵地・マツダスタジアムに戻る。それだけに、この日の試合は絶対に取りたかった。2年連続日本一を狙う工藤ホークス、そして34年ぶりの頂点を目指す緒方広島…。まだ「死闘」は続く。【ソフトバンク担当 佐竹英治】