ラオウに野望を尋ねてから、1年がたった。オリックス杉本裕太郎外野手(30)は昨年2月上旬の宮崎キャンプ中の取材にこう答えている。

「レギュラーで1年間試合に出ることが目標です。ポジション的に外国人選手との競争にもなる。ジョーンズもモヤ(ともに昨季限りで退団)もライバルになるけど、自信を持ってやるだけ。練習から自信がつくように、いっぱい練習する。あとは、この歳になっても野球をやらせてもらっていることに感謝して楽しくやるだけ!」

サングラスを取って豪快に笑い、かつ丁重な姿勢だったことを覚えている。

その前年の20年に自己最多の41試合(当時)に出場。キャンプではファーストミットも特注して内野ノックを受けていた。「試合に使ってもらえるように一生懸命、準備するだけ」と全体練習後に特守も受けていた。

打撃では、入団から4年間で放った13安打中7本が本塁打という「怪力パワー」を一時的に封印し、「大きい当たりを打つんじゃなくて、脱力した状態でもスタンドインできる技術が欲しい」と試行錯誤を繰り返した。汗だくのタンクトップに短パン姿で杉本は言っていた。「本当はボコボコ本塁打を打ちたいんやけど…今はその練習じゃない。逆方向にスタンドインできたら完璧かと思う」。レギュラーをつかむため、キャンプ、オープン戦と必死だった。そして言葉通り、昨年の第1号は4月8日ロッテ戦(ZOZOマリン)で、右翼席に弾丸ライナーを突き刺して“昇天ポーズ”を決めた。

本塁打後に右拳を突き上げるこのポーズ。「球場で自分しかやってないけん、ファンのみなさんにも浸透してほしい」というラオウの願いは、飛躍的な成長を遂げた自身が最終的にリーグ最多の32発を放って、球界でおなじみになった。スタジアムに集うファンは今や、心待ちにしている。

「レギュラーで1年間試合に出ることが目標」だった1年前から、がらりと状況が変わって、球春到来。

コロナ禍で新助っ人は来日できておらず、主砲の吉田正は両足クリーニング手術の影響もあって大阪・舞洲のC班スタート。新人王の20歳宮城、遊撃に定着した19歳紅林は新型コロナウイルス感染の影響で出遅れ、ゴールデングラブ賞の宗もコンディション不良のためC班となる。「投手4冠」でリーグMVP、沢村賞のエース山本は、ブルペン投球を「10日ぐらい」とスロー調整を明言。2月序盤から、自然とラオウ杉本の快音に注目が集まる。【オリックス担当 真柴健】