歓喜を知る男は、今季も準備を怠らない。オリックス小田裕也外野手(32)は、22年開幕に向け、着々と状態を上げている。

昨季は主に代走や守備固めで起用され、自己最多の101試合に出場。試合終盤のラストピースとして悲願の25年ぶりリーグVに貢献。「最初から気持ちは入っている。スタメンの選手と変わらない準備だよ」と献身的にチームを支えた。

渋みが増した32歳は、バットでもみせた。昨年11月12日、ロッテとのクライマックスシリーズ、ファイナルステージ第3戦(京セラドーム大阪)で、爆発的な歓喜を呼び込んだ。1点を追う9回無死一、二塁。途中出場の小田が打席に向かうと、バントの構えを見せた。そこから一転、初球バスターで強攻し、打球は一塁線を抜けた。“サヨナラドロー”で日本シリーズ進出が決定。小田は両拳を突き上げ、祝福のウオーターシャワーを浴びた。

“サヨナラドロー”に導いたバスターの反響は「すごかったね」や「あれ、サインだったの?」という連絡が多数あった。ただ、小田は「もう過ぎたことだから」と、あまり多くは語らない。「早い段階で切り替えができていた。もう時間がたって、結構、昔のように感じる」。喜びは封印して、今を生きる。

リーグ連覇&日本一に向け「これまでに自分が一生懸命やってきたことを(試合で)やる。いかに追求できるか。気持ちは毎日、最初から準備している」。温和な表情から一転、鋭いまなざしで話す。「簡単には、次のチャンスが来る立場じゃない。ミスできない立場。守備、走塁で絶対、成功しないと…。そのプレッシャーは常にある」。

選手会長の主砲・吉田正、昨季本塁打王に輝いたラオウ杉本に加え、中堅ではドラフト4位の渡部、外野手に本格転向した福田ら、俊足好打の外野手がしのぎを削る。小田は「また一から信頼を積み上げていきたい」と、何度もうなずく。必要とされる場所で、背番号50は輝きを放つ。【オリックス担当=真柴健】

2021年11月 パ・リーグクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ  オリックス対ロッテ サヨナラ適時打を放った小田(左)と抱き合う中嶋監督(撮影・垰建太)
2021年11月 パ・リーグクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ  オリックス対ロッテ サヨナラ適時打を放った小田(左)と抱き合う中嶋監督(撮影・垰建太)