手探りの毎日だった。広島ドラフト6位の末包昇大(すえかね・しょうた)外野手(25=大阪ガス)は昨秋のドラフト指名後、球団から「ファーストミットをつくっておいて」と言われた。一塁挑戦を伝えられたのだ。「本格的にファーストをやるのは高校1年生以来」と不安を胸に、春季キャンプに入った。つくりたての赤いファーストミットを手に、連日早出でノックを受けた。「なんとか試合に出るために」。出場機会をつかむという貪欲な意欲が、末包を動かした。オープン戦でも一塁と外野の併用が続いた。時折拙守もあったが、懸命に白球を追った。

苦悩が表れたのはオープン戦に入った3月上旬のことだ。これまでの赤いファーストミットから一転、青い外野用グラブで一塁守備に就いた。「元々使っていたファーストミットが合わないなというのがあって。自分の中で(外野用グラブが)合っていると思うので使っている」。ゴロやフライ、送球をさばくには、急造グラブよりも慣れ親しんたものの方がしっくりきたようだ。

外野用のグラブは2つある。1つは社会人時代から使用している青色で小指部分に「Bukkakeudon(ぶっかけうどん)」と刺しゅうの入ったもの。もう1つは赤色でプロ入りに合わせてつくったもの。一塁守備では前者を使っていた。外野用グラブの使い分けについて「社会人から使っているもので手になじみがあるので。あとは負担を減らすためですね」と意図を明かした。

3月25日のDeNAとの開幕戦。1回の守備に向かった末包が足を止めたのは猛特訓した一塁ではなく、右翼だった。松山を一塁に固定できたことや外野のレギュラーが決まらなかったことなどチーム事情で、開幕を右翼で迎えた。

広島は30日の阪神戦にも勝って開幕5連勝。末包はこの間、出場4試合はすべて右翼。だが今後いつ一塁で起用されるか分からない。一塁ミットでのノック捕球も再開した。「毎日勉強することだらけ。チームに何があるか分からないし、元々は外野だが今後も一塁の準備をすることに変わりはない」。出場機会を得ようと全身泥だらけになって打球を受けた春季キャンプ。グラブ1つからでも、向上心はひしひしと伝わる。【広島担当=前山慎治】