花束を受け取った阪神中川勇斗捕手(19)は満面の笑みで、ヤクルトの人気マスコットつば九郎と記念写真に納まった。

25日、オープン戦ヤクルト対阪神(浦添)の試合前の場面だ。左翼席の私設応援団からは、4年ぶりとなるトランペットの生の音色が聞こえる。コロナ禍の中、京都国際で甲子園に出場した高卒2年目捕手には、初体験だったはずだ。

中川は15日、高卒4年目の藤田健斗捕手(21)は16日から1軍の宜野座キャンプに合流した。昨秋就任後の岡田監督は高知・安芸キャンプにも連れていかなかった。今春も2人は2軍スタートだった。レギュラー、控え、2軍とはっきりと線引きする岡田監督がこの2人を1軍で英才教育するのは意外に感じた。

この時期に1軍の投手の球を受けることが一番の目的だが、練習試合のベンチでは岡田監督の前に座って考え方を学び、シートノックやチームプレー、サインプレーで1軍を肌で感じている。

中川は「1年間経験を積んで(1軍でも)落ち着いてできている。周りも見えている。どんどん経験を積んでいきたい」と貪欲に吸収している。受け答えもドラフト取材や新人時より落ち着き、人間的な成長も感じる。藤田も「いい経験になっています」と今後のプロ生活にとって重要な時間を過ごしている。

藤田はこのオフ、侍ジャパンの要として活躍するソフトバンク甲斐拓也捕手(30)の自主トレに参加し、多くを学んできた。甲斐もプロ初出場の14年、翌15年の出場は1試合ずつ。16年も13試合となかなか1軍に定着できなかった。藤田は「捕手は我慢することと教わった」と話す。今年すぐに1軍で結果は出ないかもしれない。だが、野村克則2軍バッテリーコーチ(49)は「1軍の感覚を肌でつかんでくれればいい。楽しみでしかない」と、成長して再会することを楽しみにしている。

正捕手梅野、坂本、そして長坂、栄枝ら越えないといけない壁は大きいが、2人が今季どのように成長していくのか、近未来のタイガースを背負う捕手の誕生をしっかりと追っていきたい。【阪神担当=石橋隆雄】