侍ジャパンが1次ラウンドを突破した。ここまでの戦いぶりを世界最高峰の舞台を経験した「WBC賢者」が総括し、今後を占った。第1回は06年WBC出場の谷繁元信氏(52=日刊スポーツ評論家)。

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打線はメジャー組が合流するまでの壮行試合の状態からすると、予想以上に打ったと思う。得点パターンが確立できている。1番ヌートバー、2番近藤が出塁して、3番大谷、5番吉田でかえす。下位打線も出塁して上位でさらにかえす。2つのパターンができていることで得点が生まれている。

B組の他国は投手陣のレベルが決して高くはなかった。そうは言っても初見で打つことは簡単なことではない。チェコ戦の相手先発サトリアの120キロ台の直球、100キロ台のチェンジアップとNPBではいない軟投に苦戦した。シーズンでの戦い同様、週1回、ローテ投手として対戦するのなら攻略しやすいが、一発勝負だと訳が違う。

日本対オーストラリア 4回表日本無死満塁、三振に倒れる村上(2023年3月12日撮影)
日本対オーストラリア 4回表日本無死満塁、三振に倒れる村上(2023年3月12日撮影)

国際試合ならではの状況下で、4番村上が苦しんでいる。投手というのは不思議なもので状態が悪い打者の空気感を感じ取り、自然といいコースに投球が決まるもの。捕手からすれば、どの打者にもしっかりした投球をすれば、そう打たれるものではないと考えるが…。調子の悪い打者に失投があまり来ないのは七不思議の1つで、球速や変化量がそこまでなくても、村上にはいいコースに決まっていた。

村上も打てていないと周りから見られているプレッシャーがかかっていた。そもそもチームに野手が15人いたら調子の悪い打者は数人は出るものだ。

それでも1次ラウンド4戦目のオーストラリア戦から復調の兆しは見えてきている。3戦目までは振らなくていいボール球にスイングが止まらなかったり、振りに行こうとして迷って手が出なかったりしていた。だがオーストラリア戦はしっかり振りに行った中で際どい球がファウルになったりしていた。

村上は入団6年目で昨季の3冠王とはいえ、この時期にピークをつくるのは初めての経験だ。肉体的なピークを持ってくることは自分でコントロールしやすいが、打席の中での感覚のズレを埋めていくためには、必要な打席数に個人差がある。10~20打席でタイミングを合わせる打者もいれば、30~40打席以上を要したり、いろいろだ。宮崎合宿の2月下旬から数えればここまで40打席を超えて、そろそろズレが埋まってくるころだ。

今は4番から動かさなくていいと思う。得点が取れてないなら考えるが、周りが打てている状況なら変える必要はない。好調な打者に挟まれながら、復調を期待したい。

谷繁元信氏(2019年11月撮影)
谷繁元信氏(2019年11月撮影)