今年の4月から始まった「野球の国から 高校野球編」。さまざまな元球児の高校時代に迫る連載の「シリーズ1 追憶」は、第27弾の王貞治氏で終了です。夏の100回大会を迎える2018年が幕を開ける1月1日から、いつまでも語り継がれる名勝負を采配した名将たちを取り上げる「シリーズ2 監督」が始まります。新シリーズ前の12月29日から3日間は、番外編として、ベースボールライターの小関順二氏(65)に、高校野球の過去と未来を語ってもらいます。ドラフト会議のテレビ中継の解説などで人気を博す小関氏の、高校野球への愛情たっぷりのトークを、3回にわたって連載します。

 12月29日から31日の日刊スポーツ紙面でお楽しみ下さい。

 ニッカン・コムでは、連載を担当した記者の「取材後記」を掲載します。


 小関さんに、高校野球の未来を聞いた。数時間のインタビューをまとめると「野球の華、ホームランが見たい」という大きな欲求を感じた。

 「パフォーマンスの充実にもっと目を向けるべき。チームの和、犠牲的な精神、礼儀なんかも必要なんだろうと思いますよ。でも、速い球を投げるとか、強いスイングをする。そういうことをもっと真剣に考えてもいいんじゃないかな」

 「みんな、高校生で左打ちになっているか、というとそうでもない。PL学園の中村順司さんも箕島の尾藤さんも言います。『入ってきたら、みんな右投げ左打ちになっているんだよ』。小学校、中学校で、親とか指導者が左打ちにしちゃう。左は一塁到達するのが速いじゃないですか。自分でもバッターランナーの一塁到達タイムとか、言い過ぎたかな? 自分でそうしたことを煽(あお)る原稿を書いているのに、ダメ出しするのもどうかと思うんですが、9人いたら足の速い選手は4人か5人でいい。あとは強く打つ。あとの4、5人は強くバット振って、強い打球を放つ。ホームランが見たいんです」

 「三振は何も悪くない。ダブルプレーと比べたら。パ・リーグの打者、柳田とか大谷は豪快に三振する。とてもいい。ファンを見ていても思います。『ここはバントだろう』とか『また振っちゃって』とか『初球から振るなよ』とかね。ああいったオッサンたちの常識をまず変えないと」

 伝統的なザ・高校野球から進化した、躍動感の色濃い、見て快感を得られる野球を欲していた。

 そこで注目しているのが若い監督と、公立高という。

 今秋の神奈川大会で、鎌倉学園は横浜高校を8回コールドで下した。「8回表に横浜が3点入れて同点。その裏、8-8の同点、先頭打者が四球。3番新倉選手が初球を勝ち越し三塁打ですよ。普通バントでしょ? バントしないで初球を打ったのは、すごい。ここの竹内監督は阪神鳥谷と早大の同期。若いんです」と言う。

 「都立高校では、コーチが集まって勉強会をやっている。大島や新宿。99年に城東を率いて甲子園に出場した有馬監督(現総合工科)らが中心にやってますよね。沖縄も公立主体にリーグ戦やっているし、佐賀もゴールデンウイークに県立の鳥栖高校を中心に「クロスロードIN鳥栖」をやってますよね。公立には、金はなくても知恵がある。神奈川も、相模原の佐相さんが『8点取られたら9点取る』って話してますよね。さっきの鎌倉学園も、1点だけのリードでは9回逆転されていたかもしれない。簡単に1アウトを相手にあげないで、打つ練習をする。守備は多少、目をつぶって打撃だけ。それが公立高校の戦い方じゃないですか」

 強豪私学に誘われる野球エリートでなくても、修練次第で長距離砲になれる。小関さんは「昔は指導方法も門外不出だったけど、今は違う。無名でも勉強熱心な指導者が、情報を取捨選択して選手に伝えれば、良い選手が育つんじゃないかな」と力説する。すべての球児がフィールド・オブ・ドリームを追い掛ける。そんな高校野球になるといい。【金子航】