元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。55回目は「プロ野球開幕2カ月の通信簿~12球団」(セ・リーグ編)です。

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 開幕から早くも約2カ月経過。Bクラスのチームもまだ巻き返し可能な時期だが、今日29日から始まる交流戦を前に12球団を投打に分け、ここまでの戦いぶりを個人的に5段階評価してみた(5月27日現在)。

※花丸=文句なし、◎=すばらしい、○=良い、△=もう少し、×=早急な改善を

◇セ・リーグ


【1位 広島 攻撃力◎、投手力◎】

 丸の離脱、昨年15勝でリーグ最高勝率の薮田がまだ本調子でない中、野間、大瀬良、岡田らが見事にカバリングし、1位に君臨している。

 各セグメントの数字が突出しているわけでもない(以下参照)。チーム総得点216(セ3位)、失点179(同3位)、打率2割5分4厘(同3位)、46本塁打(同2位)、防御率3・69(同3位)、41被本塁打(同4位)。抽象的な表現だが、勝機を逃さずスキ、ムダのない野球がこの結果につながっている。冒頭に軽く触れたが選手層も厚く、若手も順調に育っている。

 外国人助っ人もエルドレッド、バティスタらが順調な働き。出塁する、送る、返すの役割分担がきっちりできており、いい攻撃を展開している。

 投手陣では薮田以外で期待された野村が4月末に背中の筋挫傷で離脱した。それでもジョンソン(3勝)、岡田(5勝)、大瀬良(7勝)、4月途中から先発に配置転換となった九里(1勝)らの頑張りが大きい。先発で3勝の中村祐太もここ2連敗で、防御率(4・60)が高くなってきたが、実戦で22歳の右腕を育成できる環境も、選手層が厚いからこそだ。

 勝利の方程式も健在。ジャクソン、中崎、一岡、今村の顔ぶれに、今季、アドゥワも加わり救援陣の厚みも増した。

 貯金10で交流戦に入るが、今後の不安材料も見当たらない。丸、野村、ジョンソンらの復帰、本調子になってくれば、手が付けられない。


【2位 阪神 攻撃力△、投手力○】

 開幕前、金本監督が絶賛していた4番ロサリオの状態が上がってこない。主砲の両脇を固める糸井、福留は計算通り活躍しているが、打線の軸となる4番が打率2割2分8厘ではつながりも悪く得点力アップも臨めない。チーム打率2割3分1厘(セ6位)、24本塁打(同6位)、145得点(同6位)の数字は厳しいものとなっている。26、27日の巨人戦で2試合連続猛打賞の大山だが、ここまでの結果は寂しい。打率4割超、先頭打者でけん引した上本の負傷離脱も痛かった。走者がなかなか出ない打線に、金本監督も采配で頭を悩ませていることだろう。

 それでも2位(貯金2)にいるのは、チーム防御率3・23(セ1位)を誇る投手陣の踏ん張りに尽きる。先発陣はメッセンジャーが防御率2・22でリーグトップタイの7勝。秋山が防御率2・29で4勝(4敗)を中心に、救援陣は岩崎、ドリス、桑原、モレノ、マテオ、石崎(マテオ、石崎は現在2軍)らが何とか少ない得点を守りきっている。2点差以内なら15勝8敗(ちなみに首位広島は同条件で11勝9敗)、強力救援陣の活躍がチームを支えている。


【3位 DeNA 攻撃力○、投手力◎】

 昨年、先発の柱として活躍した今永、浜口が2人合わせて勝ち星なしと想定外の事態となった。しかし、チーム防御率3・42(セ2位)、失点170(同2位)と投手陣は踏ん張っている。2人の穴を埋めたのがドラフト1位の東だ。ここまで8試合登板で4勝2敗、防御率1・84は先発陣でトップ、セ2位と立派な成績。ウィーランドも勝ち星こそ1勝だが、防御率2・78とゲームは作っている。

 今永、浜口不在も中継ぎ陣が好調だからAクラスをキープ。リリーバーの頭数もいる。砂田(防御率2・79)、三上(同3・60)、三嶋(同2・22)、エスコバー(同1・11)、山崎康(同1・06)、井納(同4・08)、パットン(同4・73)。井納とパットンは1軍出場選手登録を一時抹消し充電中だが、ほかが良すぎて2人の防御率4点台が気にならないほど。

 走塁面でもカイゼンを図っている。昨年リーグ6位の盗塁39個が、現時点でリーグトップの29個。42回企画しており、成功率は69%と発展途上だが、意欲的に取り組む姿勢は数字に表れる。ドラフト2位の韋駄天(いだてん)ルーキー神里が盗塁11個。エッジの効いた神里の加入で攻撃のオプションも増えた。新外国人ソトも打率4割と好調、計35発の主軸ロペス、筒香、宮崎は12球団トップ級。攻撃の形が見えてきた。

 上位進出へ今永、浜口の活躍は不可欠。浜口は5月12日に復帰し、まだ3試合しか投げていないが徐々に投球内容も上向き。今永も復帰の気配で2人の活躍に期待がかかる。


【4位 巨人 攻撃力◎、投手力△】

 チーム内の新陳代謝が課題だったが、岡本と吉川尚輝の若手2人が出てきたことは大きい。小技の効く吉川尚と若き大砲岡本の存在は、最近の巨人になかった攻撃のいい形をもたらしている。岡本はここまで打率3割3分9厘(セ4位)、9本塁打、33打点と文句なしの成績。打率2位の坂本勇人、亀井、小林、長野も打撃の状態も上々。チーム打率2割7分3厘はセ1位、218得点も広島(216得点)を抑えて同1位。スタメンで打っていない選手がいないというほどの破壊力だ。強いて言えば盗塁数21個が少ない気もする。吉川尚は現在盗塁6個でチーム内トップだが、まだまだ足でかき回してほしい。

 投手陣は菅野が9試合5勝3敗、防御率2・06とまずまずだが、菅野への依存度がまだまだ高い気がする。山口俊の状態が上がってきたとはいえ、田口らにはもう少し頑張ってほしい。気掛かりなのは中継ぎ陣。どこまで立て直せるか。ここまで1点差以内の試合は、3勝7敗。競り合いに弱い課題をどうやって克服するか。

 上位進出の鍵は中継ぎ陣の整備、18年版勝利の方程式の形を早めに確立すること。


【5位 中日 攻撃力◎、投手力△】

 外国人の活躍が素晴らしい。打率3割6分3厘で首位打者のアルモンテ、3割1分で9位タイのビシエド、規定打席に足りていないものの打3割2分2厘のモヤ(28日に出場選手登録抹消)が打線をけん引した。チーム打率2割6分3厘はリーグ2位だ。1、2番の大島、京田の打率と出塁率がもう少し上がってくれば、もっと得点することができる。

 投手陣ではガルシアが6勝1敗で防御率1・69はリーグ1位。投打にわたり助っ人は文句なしだ。今季期待された小笠原がここまで8試合1勝4敗、防御率4・53の成績では寂しい。中継ぎの鈴木博が3勝しているものの、ガルシア1本かぶりの感があり、このままではカードで勝ち越していけない。

 上位進出の鍵は投手陣の整備と大島、京田の打率と出塁率アップが大事か。投手陣の課題が据え置かれると、打ち勝つしかない。


【6位 ヤクルト 攻撃力○、投手力△】

 先発陣は、ブキャナンが9試合4勝3敗、防御率3・12で勝ち頭だが、続くのは中継ぎの中尾で3勝。開幕当初苦しんだハフ(1勝3敗)が、ここ2試合好投しており、ブキャナンに続く柱となってくれれば。開幕前から課題だった先発投手のコマ不足は解消されていない。先発を整備しなくては投手陣全体が苦しい。

 野手は頑張っている。青木、バレ、雄平の外野陣、開幕出遅れた畠山を鑑み、本職の外野以外に一塁のポジションもこなせるようになった坂口が打率3割4分(セ3位)と元気。山田哲人(打率同6位、13本塁打=同2位)、バレンティン(12本塁打=同3位タイ)は実力を発揮している。

 巻き返しは、投手陣の整備しかない。ライアン小川がようやく今季初勝利を挙げ、明るい材料も出たがまだまだ。緊急措置は外国人獲得かトレードかしかない。

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【交流戦見どころ】

 ソフトバンクが昨年まで直近3年間で最高勝率チーム。交流戦過去13年間でパ・リーグが12回勝ち越しとパが圧倒している。1回しか勝ち越したことのないセ・リーグだがどこまで勝ちきれるか注目だ。

 勝利への鍵となるのは指名打者(DH)の使い方。打者に余剰戦力がある球団は有利に働く。エルドレッド、新井、バティスタの広島、阿部慎之助の巨人、アルモンテ、ビシエド、平田、モヤを使える中日が、交流戦で最高勝率チームになる可能性もあるではないかと期待しているのだが。2014年の巨人以来、パの牙城を崩せるか。

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 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。