2月14日、沖縄にて。久しぶりの沖縄で阪神監督、岡田彰布に会った。半ドンで終えた練習後、夕方から食事。同席していたのが投手コーチの久保田だった。彼に聞いてみた。うわさの門別…についてだった。

「それはすごい資質の持ち主。すべてに際立っているけど、これから先のことはわからない。でも可能性は無限大。現時点で僕が気にしているのがスタミナ。肩、肘のスタミナ、気持ちのスタミナ。ここがこの先、どうなるのか」。絶賛だけではなかった。いかにもコーチらしい先の見方だった。

横にいた岡田がそこでエピソードを明かした。2月11日、阪神の2024年の実戦第1弾。紅白戦でのことだった。先発した門別を岡田はオーナーの杉山健博と真後ろから見ていた。1回にピンチを招いた。打席に4番中野。門別はストレートを投げ込んだ。粘られてもストレート。杉山は「次もストレートか?」と岡田に問う。「いや、そろそろ変化球で交わすのでは…」とスライダーを予測した。すると11球目、中野の外角低め、ややボール気味に見えたストレートに、中野は空振り。「あの1球よ。あれがこの日の紅白戦のすべてよ」と岡田は興奮を隠せなかった。

「オーナーに言うたように、投手心理としては、あそこで変化球をいきたいところ。それをストレートで押した。それも低めよ。門別もすごいけど、まっすぐを要求し続けた坂本もすごいわ」。改めてバッテリーを称賛するのだった。

衝撃の1球、光り輝く1球。いい投手には必ずこんな1球がある。中野に対して投げ込んだ11球目。この1球で門別の可能性はさらに広がった。「そらこの先、何が起きるかわからん。久保田が言うように、先のことは誰にもわからんよ。ただし、この時点でオレは門別がごっついピッチャーになる…と確信しているわ」。

スポーツ新聞の紙面上から伝わってくる門別への期待感。少々オーバーになり過ぎと思っていたが、実際に言質を取れば、それ以上の評価だった。ここまで熱く語る岡田を初めて見る。だから岡田はこうも付け加えた。それは開幕投手について。2024年開幕カードの巨人戦。そこに門別はない。順当なら村上、岡田らしくいくなら青柳。そんな想像を巡らしていると「もし去年、優勝、日本一になれずに4位とかに終わっていたら、開幕門別もあり。オレはそうも考えていた」。

日本一になっただけに、無難な戦術になる。あくまで順当な用兵。それは投手も野手もなのだが、それがBクラスでの開幕なら、アッと驚くサプライズ用兵は可能。象徴は門別のプロ2年目のオープニング投手プラン。そんな考えを明かした岡田は実に楽しそうだった。

門別はあくまで先発型。だから担当コーチは安藤になるけど、ブルペン担当の久保田は門別がどう育ち、どう成長していくのか。楽しみでしかないと言う。「自分がプロ入りした時とは全然、比較にならない。ストレートの質。伸びがあり、それがすべて低めにコントロールできる。いや-、現時点では直すところがないですから」。沖縄の宿舎近くの居酒屋での話。恩納村は「門別」でさらに熱くなっていた。【内匠宏幸】(敬称略)

14日、キャッチボールする阪神門別(撮影・上山淳一)
14日、キャッチボールする阪神門別(撮影・上山淳一)