ソフトバンク対巨人 オープン戦 2番手で登板する古谷優人(撮影・栗木一考)=2020年3月10日、ペイペイドーム
ソフトバンク対巨人 オープン戦 2番手で登板する古谷優人(撮影・栗木一考)=2020年3月10日、ペイペイドーム

日刊スポーツ評論家・田村藤夫氏(61)のみやざきフェニックス・リーグ4日目は予備日となった。そこで、8日から始まった同リーグを見た3試合の中から、印象に残った選手を振り返った。

ソフトバンクの16年ドラフト2位、プロ4年目・古谷優人(21=江陵)のスピードには驚いた。試合前、スタンドで顔を合わせた各球団の編成担当から、スピードはあるが制球が課題という話を聞いていたが、8日の巨人戦で3回を1四球1三振でノーヒットに抑えた。最初のイニングと、次のイニングまで、すべてストレート。最速154キロ。巨人の打者はいずれも差し込まれていた。

3イニング目に変化球を織り交ぜていた。目を引いたのは、右打者のアウトコースから中に入るスライダーで見逃し三振を奪っている。あのボールは右打者にとってはやっかいなボールになりそうだ。

最も気になったのは、ストレートのコントロールだった。アバウトにストライクゾーンに投げているという印象だ。おそらく、捕手がコースを要求しても、それを気にして制球を乱すから、いい意味で大体のコントロールでストライクゾーンに投げているのだろう。そういう意味ではストライクゾーンに投げる制球はあるということだが、しっかりコースに投げ分けるまでではなかった。

古谷のこの球速は大きな武器になる。それも左腕でこれだけのボールを投げる投手は、1軍でもそうはいない。コースを投げ分ける制球は身に付けるべきだとは思うが、制球を重視することで球威が落ちてしまってはもったいない。古谷には、ホームベースを内側、外側の2つに分け、それを投げ分ける意識をもってブルペンから反復して投げ、どんな試合展開でも内と外は投げ分ける精度を高めてもらいたい。

カーブと、スライダー、フォークが持ち球と聞いたが、スライダーの腕の振りがストレートの腕の振りに一番近いと感じた。そういう点でスライダーは、打者にとってストレートと見分けづらいボールと言える。ただ、今のプロでは落ちるボールが威力を発揮する傾向にある。それも、古谷のあのスピードがあるのなら、フォークかチェンジアップがより有効になる。千賀がフォークを低めに制球しているように、古谷もフォークのコントロールも念頭に置いて練習をすべきだ。いいお手本が身近にいるのだから、千賀を参考に、1軍で勝てる投手を目指してほしい。

12日はオリックス-DeNA(SOKKEN)からリポートする予定だ。(日刊スポーツ評論家)