<みやざきフェニックス・リーグ:オリックス2-1DeNA>◇17日◇SOKKEN

オリックスのドラフト1位左腕・曽谷龍平投手(22=白鴎大)のピッチングには課題はあるものの、将来性は非常に高いと感じた。

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左腕で149キロはなかなかいない。それも、左バッターのアウトローで見逃し三振を奪ったかと思えば、今度は右バッターのアウトローで空振り三振に仕留めた。

率直に言って、いいピッチャーだなと感じる。182センチと身長もあり、手足も長い。その腕の長さがあるだけに、ダイナミックなフォームと思いきや、テークバックした時の後ろがそれほど大きくない。むしろ後ろが小さいから、バッターはタイミングが微妙にズレるのではないか。

打者にとってもっとも大切なのはタイミングを合わせることだ。この曽谷のピッチングフォームには、ほんのわずか打者のタイミングを狂わせるものがある。意図して作ったものなら、素晴らしい努力。天性のものるなら、これを武器にして1軍でも勝てる先発投手に育ってほしい。

124キロのカーブは、他のピッチャーで言えばスライダーのような変化をする。そして130キロ台のスライダーは、他のピッチャーで言うならカットボールのような変化になる。この日は最速149キロのストレートと合わせて、球速帯もおよそ10キロ刻みで変化がついており、理想的だった。

私が見た中では、落ちるボールがあったが、それがカットボールなのか、ツーシームなのか、そこはじっくり見させてもらったが最後まで見分けはつかなかった。

有望な左腕と言える。オリックスはここ2、3年で一気に投手陣の層が厚くなった印象がある。育成選手も順調に成長しており、既に1軍の先発陣は顔触れもそろい、来季も盤石のスタッフと言えそうだ。

山本由伸のポスティングシステムでのメジャー挑戦の可能性という大きな懸案事項はあるものの、この日の曽谷を見れば、どんな状況になっても、そうそう揺るがないピッチングスタッフがそろいつつある。

曽谷に何の注文もないかと言えば、懸念すべき点ははっきりしていた。3回を投げて無安打4奪三振での1失点。失点は曽谷がバント処理で二塁に暴投したものだった。ここに、好投手が陥りがちな不安材料は感じた。

2回まではパーフェクトピッチング。それが3回先頭打者にいきなり3-0とカウントを苦しくて結局四球。直後は素晴らしいアウトローで見逃し三振に仕留めながら、次打者のセーフティーバントで処理を誤る。

余裕で二塁で封殺できるバントだったが、捕球して反転して送球したが、ひっかけて暴投。自分の失策で1点を失っている。この場面、見ていて捕球体勢に違和感があった。

長身のせいか、しっかり膝を曲げての捕球が苦手なように感じた。見た目のぎこちなさがあるからだろう、送球ミスも一連の動きにスムーズさが欠けていたように映った。

3回の先頭打者に対して制球を乱し、それがフィールディングにも影響が出たのか、そもそもフィールディングが課題なのか。2回までの素晴らしいピッチングを見た後だけに、よけいにもろさを感じた。

初見の私が指摘するまでもなく、コーチと話し合っているだろう。誰よりも曽谷自身が、こうした不安定な部分を何とかしようと模索しているはずだ。やはり先発は6~7イニングを、2~3失点でまとめる力量が問われる。

その中で、打者2巡目を迎えても立ち上がりと変わらない制球ができるよう、この秋に自分でいろいろ試しながら糸口を見つけてほしい。(日刊スポーツ評論家)