甲子園で熱戦が繰り広げられている一方、16校以外の高3は最後の夏を戦い終えた。それでも、野球を通じて巡り合った“球縁”は、ずっと続いていく。

この出会いは、偶然ではなかったのかもしれない。昨年11月に日米通算4367安打のイチロー氏(49=マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)の指導を受けた都立の進学校・新宿(東東京)は7月20日、4回戦共栄学園戦を迎えた。試合前、同じく昨年にイチロー氏の指導を受けた富士(静岡)の選手から動画が届いた。「頑張れ! 新宿高校!」。熱い思いを受け取った。田久保裕之監督(41)は「イチローさんがつないでくれたご縁です」と感謝する。

5月に練習試合を行った新宿と富士の集合写真(田久保監督提供)
5月に練習試合を行った新宿と富士の集合写真(田久保監督提供)

神宮のスタンドには、富士・稲木恵介監督(44)がチームを代表して応援に駆けつけた。2-7で敗退。それでもその後、初優勝して甲子園に出場する共栄学園と9回まで戦った。富士は初戦敗退で、稲木監督は「チャンスをつくって、食らいついていた。突き放されても、9回に諦めずに1点を奪う姿はすごく刺激になりました」と明かす。

稲木監督が、高校野球の指導者のツテをたどって田久保監督の連絡先を入手した。昨年12月に「イチローさんに会えた代で、練習試合をやりましょう」と提案した。5月28日に、両校とも行きやすい神奈川県綾瀬市内で実現。4-3で富士が勝利した。試合後には選手同士も交流して、集合写真を撮影。富士・中沢樹主将(3年)と、新宿・中沢志弥主将(3年)はともに外国語に興味があり、専門的に学べる大学への進学を目指して勉強中。稲木監督は「これから先、2人がまたどこかで会う可能性もありますよね」と期待する。

両校は、普及活動に力を入れている共通点もある。富士は「野球交流会」、新宿は「ベースボール・アカデミー」を開き、子どもに野球の楽しさを伝えている。静岡と東京で立地は違うが、どうしたら野球が好きな子どもを増やせるか、悩みは同じだ。情報を共有し一緒に考える仲間。白球がつないだ縁は、広がっていく。【保坂恭子】