オープン戦、好調の阪神だが逆転負けを食らった。5回まで好投し、勝利投手の権利があった先発・青柳晃洋が6回、四球から崩れて敵の主砲・山川穂高に逆転満塁弾を浴びてしまった。

ここであることを思い出す。昨年オフ、虎党向けに開催されたオンライン・トークショーに出演した青柳が語っていた内容だ。

「甲子園は阪神ファンが多いので守備のときは比較的、球場が静かなんです。だからヤジもよく聞こえる。あれは本当に傷つくのでやめてほしい」

攻撃しているときは声援が多く、ヤジも聞こえにくいが青柳が投げているときは当然、静か。打たれればヤジも耳に入る。具体的でなかなか面白いと思った。

この日もなんとなく聞こえていたが、この展開、公式戦ならもっとヤジが飛んだろう。5回まで好調だったのに6回に急変してしまう。グラウンド整備を挟んで、よくある光景だったがもったいない印象だ。

先制を許した場面もヤジの標的だろう。4回、俊足の源田壮亮に二塁打を許し、無死二塁。続く3番・外崎修汰は三ゴロに打ち取った。しかし三塁→一塁に送球する間に三塁を狙った源田にあわてて一塁マルテが三塁へ悪送球。一塁守備に難があるマルテ起用の弱点が出た格好だ。

そして期待の大物ルーキー佐藤輝明だ。誕生日だったが残念ながらいいところなし。2回こそ四球を選んだがその後は雰囲気のない2三振。8回はいい当たりだったが中飛に倒れた。

佐藤輝は甲子園の地元・西宮市出身だ。当然、生活範囲をよく知るファンも多いはず。いいときはもてはやされるが不調になると、結構、リアルなヤジも飛ぶかもしれない。

プロ野球、甲子園にヤジはつきものだ。マイルドになった世相同様、以前ほどそれは手厳しくはないと思う。それでもお金を払って生活の鬱憤(うっぷん)を晴らすために球場に足を運んでいる観客は少なくないし、ヤジはあるだろう。

大事なのはそれに負けないことだ。いいときも悪いときもある。結果が出なくてヤジられても「何言うとる。黙って見とけ」と心の中で言って切り替える。そんなタフなメンタルがプロには何より重要だ。14日は巨人戦。これを最後に4月6日の巨人1回戦までここでの試合はない。限られた観客数だが、たっぷりと甲子園を味わって開幕に臨んでほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)