あかん。虎党の嘆きが聞こえてくる試合になった。阪神今季初の延長戦は12回に大量勝ち越しを許し、今季2勝目はならなかった。直接の敗因は4番手・斎藤友貴哉だろう。

そこまで必死でつないできた救援陣だったが12回を託した斎藤が1死も取れずに失点し、降板。これで一気に流れがDeNAに向かってしまった。黒星もついた斎藤だが敗戦の理由はそれだけではないと思う。

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」。江戸時代、平戸藩の藩主だった松浦静山の言葉だが知将・野村克也が好んで使い、有名にした。終わってみれば勝っていたということはあるが、負けにそれはない。言い方を変えれば、敗戦には“パターン”があるということだ。

先発の左腕・伊藤将司はよく投げたが打線が援護できなかった。5回に伊藤将自身が適時打を放って先制したものの続かない。特に6、7回と先頭打者が出て、三塁まで進んだのに無得点だったのはこたえた。

きつかったのは1死二塁から大山悠輔が三塁内野安打をマークしたが走者の糸井嘉男は三塁に進めなかったことか。続く糸原健斗が中飛を放ったので三塁に行っていれば…と思わざるを得ない。こういう走塁のスキを見せると勝てない。

踏ん張っていた伊藤将自身もその“パターン”をやってしまう。9回、先頭の桑原将志に四球を出す。「先頭打者への四球は失点になる。野球100年の歴史や」。闘将・星野仙一が口をすっぱくしていたことだ。はたして2死まで踏ん張ったものの牧秀悟に同点となる適時打を浴び、手中にしかかった白星を逃してしまった。

光明は湯浅京己だろう。11回、無死三塁のピンチで後続を断った。指揮官・矢野燿大が「抑え候補」として名前を上げるだけの力を見せたと言えるし、今後に可能性を感じさせた。勝てば勢いが出てきたはずの試合で逆転負け。痛過ぎる敗戦なのは間違いない。それでも多くの選手の必死な思いだけは伝わってきた気はするのだが。

長いシーズン、負けるパターンが出ても勝つときはある。その場合を「不思議の勝ち」というのだろうが追い込まれた阪神はそれを待つしかないのか-。いずれにしても9安打で1得点は苦しい。ここは気持ちを切り替えてDeNA3戦目を取るかどうか。当たり前だが、それが大事だ。(敬称略)

阪神対DeNA 12回表DeNA無死一、三塁、斎藤は大和に左前適時打を打たれ降板(撮影・加藤哉)
阪神対DeNA 12回表DeNA無死一、三塁、斎藤は大和に左前適時打を打たれ降板(撮影・加藤哉)