今季3度目の2桁得点、中日打線を0封しての快勝ときた。おまけに投手転向・根尾昂の登板まで見ることができて虎党は大満足だったかもしれない。敗戦処理の登板だった根尾がどう感じたかは分からないけれど、大阪桐蔭時代は紛れもない「甲子園のスター」。高校野球ファンも注目したことだろう。

そして阪神は連勝に成功した中日戦の2試合で“高校野球スピリット”のようなものを効かせているのではないかと勝手に思っている。それは「センター返し」のことだ。

「センター返しなら、いつでもできます」。日米のレジェンド・イチローが愛工大名電に入学したとき、当時の監督・中村豪に言ったことで有名なセリフがこれだ。野球の基本であるセンター返しに自信を持っていたイチロー、メジャーでの初安打もそれだった。元3冠王、元中日監督の落合博満もその重要性を説くなど、アマもプロも打撃にはついて回るものがセンター返しだ。

この試合、まず島田海吏が1回にセンター返しで出塁し、得点につなげた。さらに2回、これも投手方向に打ち返し、安打にこそならなかったが相手の適時失策を呼んだ。さらに3回は梅野隆太郎が中前打で出て、1点である。

前日の光景も似ていた。2回に佐藤輝明が放った中前打をきっかけに2得点。6回は近本光司がやはり中前打で出て、そこから2点だ。8回には大山悠輔も中前打を放っている。もっと言えば2試合連続でお立ち台に上がった梅野は、引き分けに終わった23日広島戦(マツダスタジアム)で途中出場し、センター返しの二塁内野安打を2本、放ってから復調傾向になってきたと感じている。

阪神は今季3度目の2桁得点-と書いたが過去2試合、つまり4月24日ヤクルト戦(神宮)、同30日巨人戦(東京ドーム)ではいずれも本塁打が出ていた。この日は1発なしで14安打を集めての大量点。こういう形になってくれば、打率でリーグ最下位の打線も上昇傾向に入る気がする。もちろん、そんなことはチームの内部ではいつも話されているとは思うけれど-。

さあ、重要な3戦目だ。先週19日はリーグ戦再開でDeNAに快調に2連勝した後に痛い逆転負けを食らっている。借金返済のためにも、ここは何が何でも柳裕也に食らいついての3連勝が必要だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対中日 3回裏阪神1死、梅野は中前打を放つ。投手は福谷(撮影・加藤哉)
阪神対中日 3回裏阪神1死、梅野は中前打を放つ。投手は福谷(撮影・加藤哉)