試合中、東京ドームがもっとも沸いたのはこの瞬間かもしれない。8回表、阪神の攻撃が始まる前。16日の予告先発が発表されたのに続き、ナイターで開催されたOB戦の先発投手が告知されたときだ。
阪神は江夏豊、巨人は堀内恒夫-。それに合わせ、時代を感じさせるモノクロの写真がビジョンに登場する。4万1994人が詰めかけたドームは、ドッカン、ドッカンという感じで盛り上がったのだ。
若いファンも多いし、正直言って「ほとんど知らんのでは」と思うのだが、そこがプロ野球のいいところ。親世代、あるいは祖父や祖母、そして先輩から聞かされているのだろう。そんなことを含め、なんとも言えない、高揚したムードの中、行われた試合だ。
そこで阪神は勝った。得点は大山悠輔の適時打による2点だけ。そこを先発ビーズリーから石井大智、桐敷拓馬、そしてゲラとつなぎ、巨人打線を0封しての勝利となった。
「まあ、これが普通やろな。今の打線の調子からいったらな。2点も取ったやん。すごいやん」-。指揮官・岡田彰布はどこまで真面目か冗談か分からない調子でそうコメント。直前の中日戦では13日に8点、前日14日は6点と得点していたが、これが阪神の“通常運転”と言わんばかり。
通常運転といっても別に悪口ではない。投手を中心とした守りの野球が岡田の信条。昨季はそれをベースに日本一にまで輝いたのである。それがキッチリできたということだ。そして、少しだけ意味のある勝利にもなったかもしれない。
これで巨人とは13試合を戦って6勝6敗1分け、五分の成績になった。セ・リーグ全体を見渡せば、もう1チーム、同じ6勝6敗1分けで5割なのは広島。あとの3球団には勝ち越している。つまりセ5球団には現時点で借金がなくなったということだ。
それがどうしたと言えばそれまで。それでも交流戦で苦しみ、打撃不振を含めた不安要素を抱えながら、ここまで85試合を戦ってきた。その結果がセ・リーグに借金なしで貯金4なのだから、まだまだ期待できると考えるのだ。
OBの前で巨人に勝ててよかったですね-。とベタな質問をすると岡田は「おお」と笑った。ヤマ場はまだ先。そこまで大きな連敗をせず、しのぐ。その先に何があるのか。虎党はまだまだ楽しめるはずだ。(敬称略)
【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




